セッション情報 |
シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
再生医学研究の現状と展望
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タイトル |
肝S10-4:肝前駆細胞を用いた効率的な肝細胞,胆管上皮細胞分化誘導の可能性
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演者 |
北出 光輝(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科) |
共同演者 |
吉治 仁志(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科), 福井 博(奈良県立医大・消化器・内分泌代謝内科) |
抄録 |
【目的】我々はこれまでにMETおよびEGFRが独立したシグナルを介して肝前駆細胞(HPC)分化に重要な役割を果たしていることを報告してきた.今回は,conditional knockout modelを用いて各シグナルの役割につき解析を加え,効率的な肝細胞 (HC),胆管上皮細胞 (BEC) 分化誘導の可能性について検討した.【方法】HPC細胞株はMetfl/flおよびEgfrfl/flマウス肝よりFACS sortで分離した.各細胞株のMET,EGFR ノックアウトはCre-loxシステムにより行い得られた各HPC株 (Met-/-,Egfr-/-)を用いてHCおよびBEC への分化能を検討した.さらに,Egfr-/-マウスに3,5-diethoxycarbonyl-1,4-dihydrocollidine (DDC) を投与することによりHPC依存性肝再生モデルを作成し各シグナルの役割につき解析した.【結果】AKT,STAT3活性およびHCへの分化はMet-/-において強く阻害されていた.Met-/-へMETを再導入することでHCへの分化能が回復したことよりMETはAKT,STAT3を介してHC分化に関与することが示唆された.一方BECへの分化はEgfr-/-で強く抑制された.Egfr-/-ではNotch1発現が著明に低下しており,EGFRの再導入によりNotch1発現およびBECへの分化能が回復したことからEGFRはNotch1を介してBEC分化に重要な役割を果たしていると考えられた.Egfr-/-マウスにDDCを投与したところ,Egfrfl/flマウスと比較して肝重量増加および肝障害の軽減を認めた.Egfr-/-マウスではEgfrfl/flマウスに比しHPCによるNotch1陽性ductular reactionが著明に減少した一方,HPCマーカー陽性幼弱HCが増加していたことよりEgfr-/-マウスではHPCでのNotch1発現が低下することによって分化方向がBECからHCへとシフトし効率的な肝再生が得られたものと考えられた.【結論】METとEGFRがそれぞれ独自のシグナルでHPCの分化を規定していることが明らかになった.各シグナルの発現調節により効果的なHC,BECへの分化誘導が可能となることが示唆され,HPCを用いた再生医療の可能性が開かれた. |
索引用語 |
肝再生, EGFR |