セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

再生医学研究の現状と展望

タイトル 肝S10-5:

iPS細胞が死滅し肝細胞が生存する培地

演者 富澤 稔(国立下志津病院・消化器内科)
共同演者 篠崎 文信(国立下志津病院・放射線科), 杉山 隆夫(国立下志津病院・リウマチ科)
抄録 【目的】iPS細胞から肝細胞を分化誘導する際,iPS細胞が残存する可能性は否定できない.そのためiPS細胞が死滅し肝細胞のみが生存する培地の開発が必要である.肝細胞は解糖系,尿素サイクル等の一連の酵素群を有する.ブドウ糖,アルギニンを除き,それぞれの基質であるガラクトース,オルニチンを添加した培地(hepatocyte selection medium, HSM,特許第4759723号)で培養すると3日でiPS細胞は死滅するが初代ヒト培養肝細胞は生存することを見いだした.今回我々はiPS細胞が死滅するメカニズムの解明を試みた.【方法】knockout serum replacement(KSR)の透析(D), insulin, aprotinin, dexamethasoneの添加(I)の有無(+ or -)でHSMを作成し,ヒトiPS細胞(201B7,理研細胞バンク),初代ヒト培養肝細胞(Clontech社)を培養し,HE染色,TUNEL法にて解析した.【成績】HSMにて培養開始1日後HE染色では全ての条件でヒトiPS細胞では核の濃縮,fragmentationがみられた.TUNEL法では濃縮した核に信号がみられた.【結論】iPS細胞はHSMで培養すると翌日にはapoptosisを起こすことが明らかになった.iPS細胞から肝細胞を分化誘導後3日間HSMで培養すればiPS細胞が混在しない肝細胞のみを分離することが可能になると考えられる.HSMはヒトiPS細胞から肝細胞を分化誘導して臨床応用する際に必須の医薬品になる可能性がある.
索引用語 ブドウ糖, アルギニン