セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

再生医学研究の現状と展望

タイトル 外S10-7:

短腸症候群患者に対する小腸再生伸長術 ―その臨床応用に向けて―

演者 上野 富雄(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
共同演者 中尾 光宏(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学), 岡 正朗(山口大大学院・消化器・腫瘍外科学)
抄録 【背景・目的】ブタ小腸粘膜下層(SIS)と骨髄間葉系幹細胞(MSC)を併用した消化管再生医療の研究を進め,短腸症候群(SBS)患者の治療目的に,小腸再生伸長術を発案し,前臨床研究を行っている.これまでの成果を報告する.【方法・結果】SISは成長・増殖因子を含有したまま脱細胞化された小腸粘膜下組織である.SISによる小動物消化管壁全層欠損修復では,粘膜上皮,平滑筋細胞,神経の再生を確認した.再生部のin vivo,in vitroでの運動機能の検討では,再生組織の反応は正常組織と類似していた.またMSCを併用すると,形態的にもより良好な再生結果を得た.SBS患者での小腸伸長術は拡張した小腸を腸間膜とともに長軸方向に二分し,腸間膜をスライドさせて直列に再吻合して小腸を伸長させる(図).大動物で通常の手術と同様に小腸を前葉・後葉に2分した後,半葉を切除し,半周の小腸全層欠損をSISで修復した.縫合不全はなく,組織学的に粘膜上皮の再生を認め,α-SMAおよびdesmin陽性細胞を認めた.またin vivoでは伝播性筋放電群(MMC)の再現を認めた.【まとめ】SISは消化管再生に有用な足場であり,機能的な再生が期待できる.SBSでは小腸の吸収面積を増加させることが根本治療であり,我々が考案した小腸再生伸長術は有用な方法と思料している.
索引用語 消化管再生, 短腸症候群