セッション情報 |
シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
再生医学研究の現状と展望
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タイトル |
外S10-8:肛門機能の再生・再建を目指した基礎研究の成果
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演者 |
西澤 祐吏(香川大・消化器外科DELIMITER京都大再生医科学研究所) |
共同演者 |
荒木 淳(東京大・形成外科・美容外科), 鈴木 康之(香川大・消化器外科) |
抄録 |
【背景】肛門機能障害に対しては様々な治療法が施行されてきたが,高度な肛門機能障害に対しては最終手段として人工肛門が造設される.肛門機能再生・再建に関する確立された治療法は無く,人工肛門に関しては患者QOLの観点から,管理・整容性・精神的な問題は無視できなくなっている.我々が進めている再生医療・移植医療を用いた新たな肛門機能障害に対する治療法コンセプトに関する基礎研究の成果を報告する.【方法1】in situ Tissue Engineeringの手法を用いて,肛門括約筋組織を再生させ,肛門静止圧を上昇させるモデルを作成した.ビーグル犬の肛門静止圧を指標にし,コラーゲンスポンジ(CS)とAdipose-derived stromal cells (ASCs)を用いた.会陰操作にて内・外肛門括約筋間の剥離を行い,ここにCSを挿入して,ASCsは肛門剥離部位近傍に局注で使用した.治療施行後の肛門静止圧は4週間後に有意な上昇を認めた.再生医療の手法により,肛門内圧を上昇させる治療の可能性が示された.【方法2】移植医療の進歩は目覚ましく,肛門移植をQOLを重視した人工肛門を回避する新たな治療コンセプトと考え,ビーグル犬を用いた肛門移植モデルを作成した.経会陰的に陰部神経,陰部動静脈を同定し,外肛門括約筋,肛門挙筋を含めた移植片を直腸レベルで切断し摘出した.再建は顕微鏡下に陰部神経と陰部動静脈をそれぞれ吻合した後に,外肛門括約筋,肛門挙筋を再建し,同所性自家移植を施行した.現在までに2例の生着症例があり,手技的に移植可能であることが示された.また,陰部神経の切除―吻合モデルによる検討では,術後6ヶ月で肛門機能の改善を認めることがわかった.【まとめ】肛門機能再建に関してはオーダーメード治療が重要であり,今回提示した治療コンセプトに適応する症例が存在する.今後はさらなる肛門機能の改善を目指したコンセプトとして,再生医療と移植医療をコラボレーションさせた治療モデルの開発を進めていきたい. |
索引用語 |
再生医療, 肛門機能 |