セッション情報 シンポジウム10(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

再生医学研究の現状と展望

タイトル 外S10-9:

消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻に対する組織再生医療の臨床応用

演者 水島 恒和(大阪大・消化器外科)
共同演者 山本 浩文(大阪大・消化器外科), 森 正樹(大阪大・消化器外科)
抄録 本邦,海外ともに消化管手術後に生じる腹腔内膿瘍,縫合不全などの合併症発生頻度は約2%と決してまれではない.これらの病態の大半は,保存的治療や一時的な人工肛門造設などにより治癒しうる.しかし,時として創傷治癒遅延により,難治性皮膚瘻となり,患者のQuality of Lifeを著しく低下させる.近年,幹細胞を用いた組織再生医療に対する期待が高まり,種々の疾患において臨床応用に向けての試みが行われている.脂肪由来幹細胞(Adipose Derived Stem Cells; ADSC)は多能性に加えて,抗炎症作用や血管新生作用を有することも報告されており,再生医療における有力な候補の一つである.われわれは,脂肪組織を閉鎖式ディスポーザブルキット内で自動処理し,ADSCを豊富に含む濃縮細胞液を調整できる脂肪組織由来間葉系前駆細胞分離装置を用いて,消化器外科手術に伴う難治性皮膚瘻に対する組織再生医療の臨床応用を計画した.2011年2月厚生労働省厚生科学審議会科学技術部会ヒト幹細胞臨床研究に関する審査委員会に申請,8月に承認を得て,2012年1月より研究を開始した.(UMIN000007316)消化器外科手術後の手術部位感染に起因する難治性皮膚瘻患者を対象とした.麻酔下に患者自身の腹壁もしくは臀部から大腿部より,脂肪組織を吸引採取し,分離装置を用いて,濃縮細胞液を調製する.瘻孔内の掻爬,洗浄を行った後,濃縮細胞液の半量を瘻孔周囲組織内に,残りをフィブリン糊と混合し瘻孔内に充填移植する.内視鏡にて瘻孔を確認できる症例では,内視鏡下に瘻孔周囲の粘膜下にも濃縮細胞液を移植する.主要評価項目は有害事象の有無,程度,重篤か否か,発現頻度及び発現期間とし,副次的評価項目は自己脂肪組織由来間葉系前駆細胞移植療法の完遂,皮膚瘻の閉鎖率とした.現在,症例集積を継続しながら研究を実施中であり,難治性皮膚瘻に対する組織再生医療の状況につき報告する.
索引用語 脂肪由来幹細胞, 難治性皮膚瘻