セッション情報 | シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用 |
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タイトル | 消S11-1:NASH-肝発がんモデルにおけるマイクロRNA発現の網羅的解析と新規治療への応用 |
演者 | 齋藤 義正(慶應義塾大・薬学部薬物治療学) |
共同演者 | 高杉 梓(慶應義塾大・薬学部薬物治療学), 齋藤 英胤(慶應義塾大・薬学部薬物治療学) |
抄録 | 【目的】 非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis: NASH)は我が国においても食生活の欧米化に伴い増加しており,肝発がんの原因としても注目されている.マイクロRNA は複数の標的遺伝子を制御し,発がんに重要な役割を果たしている.本研究ではモデルマウスを用いてNASHから発生する肝がんにおけるマイクロ RNAの発現プロファイルを網羅的に解析し, NASHからの肝発がんの分子機序の解明を目指した. 【方法】 NASH-肝発がんモデルとしてSTAMマウスを用いた.生後8, 12, 18週における肝組織の変化を観察した.18週以降に発生した肝がん組織ならびに背景肝組織を採取し,マイクロ RNAの発現変化をマイクロアレイによって網羅的に解析した.有意な発現変化のみられたマイクロ RNAについてはその標的遺伝子やエピジェネティクス変化による発現制御についてHepG2細胞を用いた検討を行った. 【成績】 マウスの肝組織において生後8週よりNASHの状態となり,12週で肝硬変,18週以降に肝がんが発生していることを確認した.NASHから発生した肝がん組織において背景肝に比べmiR-31, miR-122, miR-203の有意な発現低下を認めた.これらのマイクロRNAのうち,肝特異的に発現し,Cyclin G1を標的遺伝子としてがん抑制的に機能するmiR-122に注目した.HepG2細胞においてもmiR-122の発現が抑制されていたが,DNAメチル化阻害薬である5-aza-2'-deoxycytidineを添加したところ,プロモーター領域の脱メチル化と共にmiR-122の有意な発現上昇とCyclin G1の発現抑制を認めた. 【結論】 NASHからの肝発がんにおいてはmiR-122の発現低下が重要な役割を果たしていることが明らかとなった.MiR-122はエピジェネティクス機序によって制御されていることが示唆され,DNAメチル化阻害薬を用いたエピジェネティック治療がNASHを背景に発生する肝がんの新たな治療戦略となる可能性が考えられた. |
索引用語 | NASH, マイクロRNA |