セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 肝S11-2:

p62:Nrf2遺伝子二重欠損マウスは過食によりNASHを自然発症する

演者 蕨 栄治(筑波大・医学医療系)
共同演者 秋山 健太郎(筑波大・医学医療系), 正田 純一(筑波大・医学医療系)
抄録 【目的】我々の作製したp62遺伝子ならびにNrf2遺伝子の二重欠損マウス(p62:Nrf2-DKO)は,通常食餌による飼育下で約10週齢以降に過食による肥満と単純性脂肪肝を呈し,約30週齢以降にNASHを発症,50週齢以降の約10%の個体に腫瘍が出現する.これまでの検討では,DKOマウス腸管には上皮組織の脱落等の障害がみられることから,腸管バリアー機能の低下によるリポ多糖類による自然免疫活性亢進が,肝障害の進展に重要な因子となっていると推測された.今回は,(i)過食と病態進展との関係,(ii)プロバイオティクス長期投与の効果,(iii)MRIによる肝クッパー細胞の機能,を解析し,本マウスのより詳細なNASH発症機序を探った.【方法】(i)制限給餌によりp62:Nrf2-DKOマウスの過食を長期間抑制して飼育し,肝,腸管,脂肪組織の病理形態を観察した.(ii)プロバイオティクスとしてVSL#3を10週齢より飲水投与し,25,45週齢における病理形態を観察した.(iii) 肝特異的造影剤としてSPIO(超磁性酸化鉄)を用い,その取り込みを動物用小型MRIにより測定してクッパー細胞の貪食能を評価した.【結果】(i)約20週間の制限給餌により,p62:Nrf2-DKOマウスの肥満,腸管上皮の低層化,内臓脂肪の炎症性細胞浸潤,NASH肝病変は劇的に軽減した.(ii)プロバイオティクスの長期投与により,腸管,内臓脂肪,肝の病態は軽減した.(iii) p62:Nrf2-DKOマウスのクッパー細胞の貪食能は若齢時より低下していた.【結論】p62:Nrf2-DKOマウスのNASH発症には,過食が最も重要な因子となっていることが明らかとなった.腸管バリアー機能の低下に加え,クッパー細胞機能低下も炎症病態進展の一因となっている可能性が示された.
索引用語 NASH, 過食