セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 肝S11-3:

NASH発癌におけるTLRとmacrophageの役割

演者 三浦 光一(秋田大大学院・消化器内科学)
共同演者 大嶋 重敏(秋田大大学院・消化器内科学), 大西 洋英(秋田大大学院・消化器内科学)
抄録 【目的】我々はこれまでNASH進展にToll-like receptor(TLR)を介するマクロファージからの炎症性サイトカインが増悪因子である事を報告してきた.今回は,NASH発癌においてTLR2およびTLR4の関与,さらにマクロファージの役割を検討した. 【方法】 NASH発癌モデルである肝細胞特異的PTEN KOマウス(以下PTEN KO)を用いて,以下の実験を行い,肝腫瘍発生に対するTLRおよびmacrophageの役割を検証した.1. PTEN-TLR4 double KO (以下 DKO)マウス,PTEN-TLR2 DKOマウスの作成.2. 腸内細菌由来のTLR リガンド減量目的に抗生剤を経口投与(64週間投与,回収時72週齢).3.マクロファージが骨髄細胞の由来する特徴を活かし,TLRKOマウス骨髄のPTENKOマウスへの移植によるキメラマウスの作製.4. NASH発癌状態でのliposomal clodoronateの繰り返し投与によるマクロファージのdepletion. 【成績】48週齢のmale PTEN KOマウスでは典型的NASH像とほぼ全例に前癌病変を認め,72週齢では全例で肝癌が多発した.TLR4KOおよびTLR2KOマウスとのDKOの検討では,PTEN-TLR4 DKOマウスで48週齢,72週齢ともに肝腫瘍の数や大きさが抑制された.また背景肝の炎症細胞浸潤や肝線維化も軽減し,血清ALT上昇や炎症性サイトカイン発現も抑制された.一方,PTEN-TLR2 DKOではcontrolであるPTEN KOマウスを比較して,背景肝のNASHおよび発癌において明らかな差を認めなかった.次に抗生剤長期投与によるTLRリガンド減量群では,炎症細胞浸潤軽減と血清ALT低下が認められ,肝腫瘍の成長が抑制された.キメラマウスの検討では,PTEN KOマウスにTLR2KOマウス由来骨髄細胞を移植した群では48週齢でコントロールと明らかな差がなかったが,TLR4KOマウス由来骨髄細胞を移植した群では炎症細胞浸潤の軽減と腫瘍径が抑制された.PTEN KOマウスのマクロファージのdepletionにおいても炎症軽減と肝腫瘍径が抑制された.【結論】 NASH発癌においてTLR4およびマクロファージは重要な役割を果たし,特にマクロファージに発現するTLR4は炎症惹起と肝腫瘍の成長に寄与している.
索引用語 NASH, 肝癌