セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 肝S11-4:

NASH肝障害・肝発癌の病態形成における,オートファジー抑制を介した持続的アポトーシスの寄与

演者 田中 聡司(大阪大大学院・消化器内科学)
共同演者 疋田 隼人(大阪大大学院・消化器内科学), 竹原 徹郎(大阪大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景/目的】NASHでは脂肪摂取に伴う肝障害を背景に肝発癌へと至るが,そのメカニズムは明らかではない.そこで本研究では,NASHにおける発癌機構の解明を目的とし,脂肪酸投与による肝細胞オートファジー及びアポトーシスへの影響ならびに肝発癌への影響を検討した.
【方法/結果】マウス肝細胞株にパルミチン酸(PA)を投与すると,LC3-IからLC3-IIへのシフトを認めるも,P62蛋白蓄積を認め,PAはオートファジーを抑制した.またPA投与により濃度依存的にCaspase-3/7活性は上昇し,アポトーシスが誘導された.PA投与時にRubiconをknockdownさせてオートファジーを亢進させると,アポトーシスは抑制された.
一方,高脂肪食を負荷したWTマウスでは,負荷1カ月の時点で血清脂肪酸濃度の上昇を認め,WBや電子顕微鏡像より軽度のオートファジー抑制を認めるも肝細胞アポトーシス増加は認めなかった.負荷3か月以降オートファジーは強く抑制され,ERストレス蓄積を伴い,血清ALT値上昇,TUNEL陽性細胞数増加などアポトーシス増加を認めた.高脂肪食負荷3週間後のMx1-Cre Atg7fl/flマウスにpoly IC投与しAtg7を欠損させ,負荷開始から1か月後の解析では,オートファジーはより強く抑制され,肝細胞アポトーシスが強く誘導された.以上より高脂肪食はオートファジーを抑制し,ERストレスを上昇させ肝細胞アポトーシスを誘導すると考えられた.またBcl-xL KO及びMcl-1 KOマウスでみられる肝細胞アポトーシス持続はTNFαや酸化ストレスの上昇を伴って生後1年で肝発癌を誘導したこと,WTマウスへの高脂肪食負荷1年の時点で41.7%に肝発癌がみられたことより,高脂肪食負荷によるオートファジー抑制を介した持続的肝細胞アポトーシスが肝発癌を誘発する可能性が考えられた.
【結語】過剰脂肪酸存在下ではオートファジー抑制により持続的肝細胞アポトーシスが誘発され,TNFαや酸化ストレスの上昇を伴って肝発癌を惹起する可能性が示唆された.
索引用語 肝癌, NASH