セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 肝S11-6:

新規NASH/NAFLD関連肝発癌モデルとペントキシフィリンによる発癌抑制効果

演者 白上 洋平(岐阜大大学院・病態情報解析医学DELIMITER岐阜大大学院・消化器病態学)
共同演者 森脇 久隆(岐阜大大学院・消化器病態学), 清島 満(岐阜大大学院・病態情報解析医学)
抄録 【目的】NASHに関連する肝癌は本邦でも重大な課題となってきている.NASHの薬物療法は確立されていないが,最近,キサンチン誘導体でありTNF-α産生や酸化ストレスを抑制するとされるペントキシフィリン(PTX)がNASHの病態を改善したとの報告がなされている.今回,PTXによるNASH改善効果とNASH肝癌に対する作用について検討するため,新規NASH関連肝発癌モデルを含めた2系統のマウスを用いた実験を行った.【方法】肥満糖尿病モデルであるdb/dbマウス,および新生仔にグルタミン酸ナトリウム(MSG)を投与したMSGマウスにジエチルニトロサミン(DEN)を投与し,一定期間後に肝前癌病変もしくは肝腫瘍が観察されるNASH関連肝発癌モデルを作製,DEN投与1週間後よりPTX(100 mg/kg/day)を飲水投与し,その影響を対照群と比較した.【成績】新規モデルであるMSGマウス実験系では,DEN投与16週後に観察された肝腫瘍はPTX群において腫瘍数,腫瘍径ともに有意に小さくなっていた.またMSGマウスはDEN誘発肝発癌に高い感受性を示すと考えられた.db/dbマウス実験系においても,DEN投与14週後に認められた肝前癌病変数はPTX群において有意な減少を認めた.両実験系ともNAFLD activity score,肝TG蓄積量および酸化ストレスマーカーにPTX群と対照群との有意差はみられなかった.db/dbマウスPTX群では血清総コレステロール,TG,遊離脂肪酸,およびALTが有意に低値であった.また同群において,肝内の炎症性サイトカイン(TNF-α,IFN-γ,IL-1β)や脂質代謝関連遺伝子(FAS,SREBP1c,ACC1)のmRNA発現量が有意に減少していた.【結論】PTX投与によりNASHの組織学的な改善は認められなかったが,NASH関連肝発癌は抑制され,その機序として肝における炎症性サイトカインの産生抑制が考えられた.また近年,肝発癌と脂肪酸合成系遺伝子の関連性が指摘されており,それらの遺伝子発現低下もPTXによる肝発癌抑制の機序の一つと考えられた.
索引用語 NASH, ペントキシフィリン