セッション情報 ワークショップ8(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会・消化吸収学会合同)

消化器疾患と胆汁酸

タイトル 消W8-1:

Barrett食道の発生過程における胆汁酸逆流の役割

演者 数森 秀章(松江生協病院)
共同演者 木下 芳一(島根大・2内科)
抄録 [目的]Barrett食道は扁平上皮が円柱上皮におきかわる病態であるが、その発生機序は明らにされていない。我々は胆汁酸によって食道扁平上皮細胞にCdx2の発現が誘導され、その結果Barrett食道が発生する可能性を示してきた(Kazumori H, et al. Gut 2006)。さらに我々はCdx2だけでなくCdx1もBarrett食道において発現を認め、Cdx1とCdx2との相互調節機序がBarrett食道の発生に重要な役割をもつことを報告してきた(Kazumori H, et al. Gut 2009)。Krüppel-like factor 4 (KLF4)は増殖、分化、発生などを制御する役割をもつ転写因子であるが、Barrett食道における発現の有無は明らかでない。今回我々はBarrett食道の発生過程における胆汁酸逆流とKLF4の発現の関連の有無を検討するとともに、KLF4とCdx2との関連について検討した。[方法]ラットを用いて食道空腸吻合による胆汁酸逆流モデルを作成し、免疫染色にて、Cdx2およびKLF4の局在を検討した。胆汁酸のKLF4 promoter活性に対する影響をLuciferase assayによって検討した。食道扁平上皮細胞を胆汁酸で刺激し、KLF4の発現の有無を検討した。KLF4発現vectorを用いて食道扁平上皮細胞にKLF4を強制発現させ、Cdx2およびMUC2の発現が誘導されるか否かを検討した。[成績]食道空腸吻合6ヶ月後に形成されたBarrett上皮にKLF4の発現を認めた。胆汁酸によってKLF4 promoterの活性が増強され、その作用はNF-kBを介したものであった。さらに食道扁平上皮細胞においてKLF4を強制発現させることによってCdx2の発現が誘導 され、またCdx2を強制発現させることによってKLF4の発現が誘導された。最終的に食道扁平上皮細胞にKLF4を強制発現させるとMUC2の発現が誘導された。[結論]胆汁酸によって食道扁平上皮にKLF4の発現が誘導され、KLF4はCdx2との相互作用を介してBarrett食道の形成に関与する可能性が示唆された。
索引用語 Barrett食道, KLF4