セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 消S11-8:

NASH肝癌の診断における血中Insulin-like growth factor-1(IGF-1)測定の有用性

演者 堀本 啓大(北海道大大学院・消化器内科学)
共同演者 中西 満(北海道大大学院・消化器内科学), 中馬 誠(北海道大大学院・消化器内科学)
抄録 【背景】NAFLD/NASH診断における最大の目標は肝硬変・肝癌に至る症例の選定である.近年Growth Hormone(GH)の刺激により分泌されるIGF-1がインスリン抵抗性の指標となる他,肝線維化も反映することが報告されている.今回,NAFLD/NASH肝硬変・肝細胞癌における血中IGF-1測定の有用性を検討した.【方法】対象は当院で組織学的に確定診断したNASH19例(肝硬変:7例,肝細胞癌:6例,いずれの合併もない症例:10例),FIB-4 indexがLow-cut off index(<1.30)であるNAFLD 46例.コントロール群としてHBV無症候性キャリアの血清を用いた. IGF-1は年齢,性別で換算した標準偏差スコア(SDS)で表し下記を評価した(1) NAFLD,NASHおよびNASH肝硬変における発症関連因子の検討(ロジスティク回帰).(2)各関連因子とIGF-1との相関(3)NASH症例における発癌・非発癌別のIGF-1値の測定.【成績】(1)NAFLD発症関連因子として多変量解析でBMI25以上(P<0.05),空腹時血糖(FPG)100mg/dl以上(P<0.05),g-GTP37U/L以上(P<0.01)が,NASH発症関連因子としてHOMA-IR2.5以上(P<0.01),IGF-1が-1SDS未満(P<0.01), 血小板数19万/ul未満(P<0.01)が抽出された.また肝硬変発症関連因子として多変量解析ではIGF-1が-1SDS未満(P<0.05),4型コラーゲン7S 4.7ng/ml以上(P<0.05)が抽出された.(2)IGF-1はFPG(r=-0.48, P<0.01),HOMA-IR(r=-0.53, P<0.01),ヒアルロン酸(r=-0.59, P<0.01),4型コラーゲン7S(r=-0.61, P<0.01)と逆相関しておりインスリン抵抗性,肝線維化との関連が示唆された.(3)NASH症例における肝細胞癌発癌,非発癌の比較では(肝細胞癌6例/非発癌11例,測定なし2例)IGF-1の中央値がそれぞれ-2.97, -2 . 01であり発癌例で有意に低い結果であった(P<0.05).【結論】血中IGF-1の測定はインスリン抵抗性・肝線維化を反映することでNAFLD/NASHにおける肝硬変・肝癌進展の予測因子として有用である可能性が示唆された.
索引用語 NASH, 肝癌