セッション情報 |
シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)
NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用
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タイトル |
肝S11-9:非アルコール性脂肪性肝炎を基盤とした肝細胞癌の病理組織学的検討
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演者 |
小木曽 智美(東京女子医大・消化器内科) |
共同演者 |
谷合 麻紀子(東京女子医大・消化器内科), 橋本 悦子(東京女子医大・消化器内科) |
抄録 |
【目的】非アルコール性脂肪性肝炎を基盤とした肝細胞癌 (NASH-HCC) 症例が集積され,その臨床的特徴が明らかにされつつある.しかし,病理所見の特徴に関する解析は少ない.近年,steatohepatitic HCC,癌幹細胞の自己増殖に関わるNanog,酸化的DNA傷害マーカー8-OHdG,細胞の増殖・分化を制御するセリン/スレオニンキナーゼであるliver kinase B1 (LKB-1),リン酸化 (p-) LKB-1とHCCの関連が報告されている.今回これらとNASH-HCCの関連を明らかにするため検討した.【方法】対象は,1999年-2013年に当院で肝切除例中,NASH-HCC 20例と性年齢を一致させたC型肝炎ウイルスによるHCV-HCC 20例である.(1)癌部の脂肪性肝炎所見の出現率,(2) 非癌部と癌部のNanog,8-OHdG ,LKB-1,p-LKB-1の免疫染色所見を,10-<50 %の染色細胞を認めるものを弱陽性,50%以上を強陽性とし両群で比較検討した.【成績】(1) 癌部における中等度以上の steatosis; NASH-HCC 35%/ HCV-HCC 10 %,Mallory体60%/ 15%,Ballooning 55%/ 10 %,pericellular fibrosis 30%/10 %で,NASH-HCCで出現率が高かった.(2) 免疫染色; Nanogは細胞質に発現し,非癌部での陽性率は,弱陽性NASH-HCC 15%/ HCV-HCC 5 %,強陽性85%/ 95 %,癌部では弱陽性25%/ 15 %,強陽性15%/ 0 %で,強陽性例は全例steatohepatitic HCCであった.8-OHdGは核に染色され,非癌部弱陽性60%/65%,強陽性20%/20%,癌部陽性30%/35%,強陽性50%/45%で,HCV-HCCはほぼ同様の傾向であった.LKB-1は細胞質に染色され,対象ほぼ全例で癌部,非癌部とも弱陽性,p-LKB-1は細胞質で染色され,NASH-HCC,HCV-HCCの癌部,非癌部とも弱陽性50%であった.【結論】NASH-HCCではHCV-HCCに比しsteatohepatitic HCCが高率であった.癌部でNanogを強発現する例はNASH-HCCに高頻度で,全例steatohepatitic HCCで,NASH-HCCと関連する可能性が示唆された. |
索引用語 |
steatohepatitic HCC, Nanog |