セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 消S11-10:

肝細胞癌を発症したNASH症例における肝組織中脂肪酸組成の特徴

演者 山田 和俊(金沢大附属病院・消化器内科)
共同演者 水腰 英四郎(金沢大附属病院・消化器内科), 金子 周一(金沢大附属病院・消化器内科)
抄録 【目的】近年,生活習慣病の増加により非アルコール性脂肪肝炎(NASH)を背景とした肝細胞癌(HCC)の患者が増加している.我々は肝組織中の脂肪酸組成とNASHの病態との関連性について検討してきたが,今回HCC発症NASH症例における肝組織中脂肪酸の特徴について検討した.【方法】対象は当施設においてNASHと診断され,肝組織中の脂肪酸を測定しえた63例(HCC群23例,非HCC群40例)とした.NASHの定義としては飲酒歴がなく,HBs抗原陰性かつHCV抗体陰性で,自己免疫性など成因を認めないもののうち,組織学診断によりNAFLD type3,4(Matteoni分類)もしくはBurned-out NASHと診断されたものとした.脂肪酸の測定には経皮的肝生検にて採取した肝組織を用い,ガスクロマトグラフィー法にて脂肪酸含有量を測定し,両群における特徴を評価した.【成績】臨床検査値では,HCC群でPLT,PT活性,ALT,HbA1c,T-Cho,TGの有意な低下とヒアルロン酸の有意な増加を認めた.背景肝の組織学的な特徴としては,HCC群で線維化(staging)の進行と肝脂肪化(Steatosis score)の低下を認めた.肝組織中の脂肪酸含有量についてはHCC群でC14:0,C16:0,C17:0,C18:0,C18:1n9,C18:2n6,C20:1n9,C18:3n3の脂肪酸の有意な増加を認めた.脂肪酸含有量は肝組織の肝脂肪化と強く相関しており,各種脂肪酸の含有率(対象脂肪酸量/総脂肪酸量)を測定し,肝脂肪化(Steatosis score)で補正したところ,HCC群においてC16:1の脂肪酸含有率が統計学的有意差(P<0.05)をもって増加していた.【結論】NASH患者ではHCC発症例と非発症例で背景肝の脂肪酸組成に変化を認めた. 特にC16:1の脂肪酸含有率は肝脂肪化と独立してHCC発症群で増加しており,HCCの発症に脂肪酸組成の変化が関与している可能性が示唆された.
索引用語 NASH, 脂肪酸