セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 肝S11-12:

NASH及びメタボリックシンドローム関連肝癌を含む非ウイルス性肝癌切除症例の解析

演者 松村 聡(東京医歯大大学院・肝胆膵・総合外科学)
共同演者 田中 真二(東京医歯大大学院・肝胆膵・総合外科学), 有井 滋樹(東京医歯大大学院・肝胆膵・総合外科学DELIMITER浜松労災病院)
抄録 近年NASHを含めた非ウイルス性肝癌の割合が増加しているが,飲酒量の評価や病理組織学的診断も含めてNASHと診断し得る症例は比較的少ない.一方で生活習慣病の増加に伴い肥満や糖尿病などのメタボリックシンドロームに関連した肝癌が増加していることは明らかである.当科におけるNASHを含む非ウイルス性肝癌切除例の臨床病理学的および分子生物学的特徴について検討した.
対象は2000年4月から2012年12月までに当科で肝切除を施行した肝細胞癌549例.背景因子はB型肝炎100例,C型肝炎278例,重複感染4例,非ウイルス性肝癌167例であった.
臨床病理学因子の検討では非ウイルス性肝癌はC型肝炎肝癌と比較し男性に多く,術前血清アルブミン値と血小板数が高く,ICG15分値は低かった.また最大腫瘍径は大きく,背景肝は肝硬変が少なかった.B型肝炎肝癌と比較すると年齢と術前PT%が高かった.一方で無再発生存期間,全生存期間共にC型肝炎肝癌,B型肝炎肝癌と比べて非ウイルス性肝癌は予後が良かった(vs C型 p=0.0059,p=0.0181,vs B型 p=0.0042,p=0.0004).またB型肝炎肝癌,C型肝炎肝癌,非ウイルス性肝癌の代謝関連因子の割合は,肥満例は17.6%,27.5%,37.5%,糖尿病合併例は8.8%,15.0%,45.0%,高血圧合併例は17.6%,50.0%,62.5%,脂質異常症合併例は26.5%,16.3%,37.5%などと全て非ウイルス性肝癌で多かった.さらに肝癌153例の癌部・非癌部組織の網羅的遺伝子発現解析結果を代謝関連因子でクラスタ解析を行い遺伝子機能解析を施行した.非ウイルス性肝癌の非癌部組織において肥満度と正相関し,年齢及び脂質代謝異常症と逆相関する群では,エンドサイトーシス関連遺伝子群に有意な発現異常を認め,いくつかの遺伝子では術後無再発生存期間との有意な相関が認められた.
NASHを含めた非ウイルス性肝癌は,ウイルス性肝癌とは別の臨床像を示し比較的予後は良好であるが,特異的な遺伝子機能異常を内包している可能性がある.
索引用語 肝細胞癌, メタボリックシンドローム