セッション情報 シンポジウム11(肝臓学会・消化器病学会合同)

NASH肝癌の発がんメカニズム解明と治療への応用

タイトル 肝S11-13:

非B非C肝細胞癌発癌におけるSIRT1発現の意義

演者 小西 秀幸(九州大大学院・消化器・総合外科学)
共同演者 調 憲(九州大大学院・消化器・総合外科学), 前原 喜彦(九州大大学院・消化器・総合外科学)
抄録 【目的】長寿関連遺伝子SIRT1はニコチンアミドジヌクレオチド(NAD)依存性ヒストン脱アセチル化酵素であり,SIRT1欠損マウスの脂肪肝発症が報告されている.非B非C肝細胞癌発癌におけるSIRT1発現の意義を検討した.【方法】非B非C肝細胞癌非腫瘍部28例を用いて,SIRT1遺伝子発現量,免疫組織化学染色を用いたSIRT1陽性細胞の検討を行った.SIRT1活性の指標として補酵素NAD,NAD量を調節するNAMPT遺伝子,アセチル化ヒストン量を検討した.NASHモデルステリックマウスにおいて病態の進展とSirt1,及びNampt遺伝子発現量の関連を検討した.組織切片を用いた免疫染色,肝癌細胞株HepG2,Hep3Bにおいて,SIRT1発現誘導機構を検討した.細胞株において,SIRT1の炎症性ケモカインCXCL10,MCP-1発現に与える影響を検討した.【結果】非B非C肝癌非腫瘍部においてSIRT1発現は健常(生体肝移植ドナー)肝に比して高値で(P=0.001),脈管周囲の肝実質細胞の核が染色陽性であった.一方で,肝内において健常肝に比して補酵素NAD(P=0.04),NAMPT遺伝子発現(P<0.001)は低下,ヒストンアセチル化は増加しており(P=0.004),SIRT1活性は抑制されていることが示唆された.ステリックマウスにおいては進展したNASH病態におけるNampt遺伝子発現低下(P=0.02),低下に続いてSirt1遺伝子の増加傾向を認めた.HepG2,Hep3B細胞を低酸素条件で培養した結果,HIF1蛋白質の蓄積,及びSIRT1遺伝子の誘導を認めた.さらに連続切片を用いて免疫染色をおこなった結果,非B非C症例においてHIF1陽性症例を認め,それら症例はSIRT1陽性症例であった.HepG2細胞は低酸素条件下において高グルコース含有培地でNAD低下状態に誘導した結果,CXCL10,MCP-1を誘導した.低グルコース培養によるNAD量の回復,SIRT1活性化剤によってそれらケモカイン発現は抑制された.【結論】非B非C肝においてはSIRT1発現が誘導されているものの肝内NAMPT発現,並びにNAD量が低下し,SIRT1活性の抑制が考えられた.SIRT1活性低下が非B非C肝炎の炎症・発癌に関与している可能性がある.
索引用語 SIRT1, 非B非C肝癌