抄録 |
【目的】生活習慣の変化から近年増加しているNon-Alcoholic Fatty Liver Disease (NAFLD) は,内臓脂肪型肥満に伴う腹圧上昇からGERD症状が誘発されることが推察される.【方法】NAFLD 92名(男:女=44:48,平均年齢58歳)のうち糖尿病治療者を除外したNAFLD 70名をoutpatients NAFLD群 (NAFLD群)とし,勤務労働健診者215名(男:女=106:109,平均年齢51歳)の中で,飲酒歴がなく腹部超音波にて脂肪肝を認めた26名をnon-outpatients NAFLD群 (Non-NAFLD群),脂肪肝の無い健診者139名をcontrol群とし,FSSGによるGERD症状と症状に関連する因子について検討した.【成績】1. NAFLD群ではcontrol群に比し,GERD症状スコアは高く,cut-off値8以上を示した割合も高かった(7.4/37% vs. 4.5/20%, p<0.001).2. NAFLD群では,BMIや内臓脂肪面積ではなく,TG値 (p=0.003, r=0.349)とT-CHO値 (p=0.005, r=0.331)のみがGERD症状と相関した.TG,T-CHO値を基準値で2群に分けた場合,NAFLD群では脂質基準値以上群でGERD症状は強かったが,control群では脂質高値でGERD症状が増加しなかった.3. 腹部超音波にて脂肪化の程度を評価した結果においても,GERD症状が脂肪化の程度に応じて段階的に増強されることはなかった.4. NAFLDのGERD症状関連因子は,内臓脂肪面積やBMIでは無くTG値やT-CHO値であることが多変量解析の結果判明した (OR: 3.96,95%CI: 1.31-11.90, p=0.014, OR: 3.39,95%CI: 1.11-10.35, p=0.032).【結論】NAFLDでは,腹圧上昇に寄与すると思われる内臓脂肪面積,BMI,肝の脂肪沈着ではなく,血清脂質がGERD症状を惹起する可能性が示唆された. |