セッション情報 シンポジウム12(消化器病学会・消化吸収学会合同)

GERDと生活習慣病

タイトル 消S12-9:

脊椎矯正術を要する高度脊柱変形高齢者における逆流性食道炎と胃食道酸逆流の特徴

演者 杉本 光繁(浜松医大・1内科)
共同演者 西野 眞史(静岡厚生連遠州病院・消化器内科), 古田 隆久(浜松医大・臨床研究管理センター)
抄録 背景と目的: 高齢化社会に伴って,骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折に起因した高度の脊柱後弯症例が増している.基本的な治療方針として安静管理と薬物療法が中心となるが,高度の背部痛や姿勢異常,歩行困難などを生じた場合には脊椎矯正手術を要する場合がある.そのような症例は,脊柱後弯を伴わない症例と比較して,胸郭や腹腔の圧迫や容積の低下によって逆流性食道炎(GERD)を高頻度に合併することが知られている.脊柱後弯症例のGERDは,バレット食道や滑脱型ヘルニアの存在との相関が報告されているが,矯正手術を要する高度亀背症例における胃食道酸逆流の特徴は明らかではない.方法:高度脊柱後弯に伴う症状により脊椎矯正手術を当院整形外科にて受ける29名に対して,上部消化管内視鏡検査,食道胃内pHモニタリング検査,Fスケール問診票を行い,高度脊柱後弯症例における内視鏡的粘膜傷害や胃食道酸逆流の程度を評価した.結果:高度脊柱後弯症例のGERD発症率は55.2%(16/29)であり,Grade Mが31.0%(9/29),Aが6.9%(2/29),Bが6.9%(2/29),Cが10.3%(3/29)であった.また,バレット食道合併率は72.4%(21/29),滑脱型ヘルニア合併率は65.5%(19/29)と高率に認めた.食道内pH4以下の時間割合の中央値は6.4%(0.5-61.1%)であり,5%以上の異常酸逆流を認めた症例は55.2%(16/29)と高率で,そのうち9人は酸分泌抑制薬を内服していた.酸逆流回数,5分以上の逆流回数,最大逆流時間の中央値は,93(26-513),3(0-33),13(1-146)と胃食道逆流のスコアは高く,特に食道粘膜傷害を認めた症例で胃食道酸逆流の程度が有意に高度であった.Fスケール問診票のスコアは,全体で10(1-40)であり,内視鏡の重症度と有意な相関を認めた.考案: 脊椎矯正手術を要する高度の脊柱後弯はGERD発症の危険因子であり,バレット食道やヘルニアの存在が高率に認められた.当日は,術後のGERDの評価もあわせて報告をする予定である.
索引用語 脊柱後弯, 逆流性食道炎