抄録 |
【目的】本邦におけるGERDの頻度は高齢者女性と中年男性に高いことが報告され,性差が存在する.ここでは性差からみたGERDの発生要因について検討した.【方法】検討1:医療機関を受診した50歳以上の患者(連続する女性100名;平均年齢76歳,男性47名;74歳)を対象に脊柱後弯度と食道裂孔ヘルニアの関連を検討した.脊柱後弯度は患者の側面写真撮影によるCobb角,食道裂孔ヘルニアの重症度は幕内分類(C: 1cm以下,B: 1-3cm,A: 3cm以上),およびHillのgastroesophageal flap valve(GEFV: grade I~IV)を用いた.検討2:上部消化管バリウム造影検査を受けた検診受診者(連続する女性104名;平均年齢48歳,男性305名;平均年齢47歳)で,胃形態(瀑状胃及び非瀑状胃)と上腹部症状(胸やけ,胃もたれ,心窩部痛),BMIとを比較検討した.【成績】高齢女性の食道裂孔ヘルニアの重症度はCobb角と関連し(幕内分類grade 1: Cobb角15.7±7.77, grade 2: 21.3±11.1, grade 3: 23.6±13.0, grade 4: 36.9±9.92),BMIとの関連を認めなかった.瀑状胃者は男女と共に非瀑状胃者に比べて有意に胸やけ症状を多く訴えていた.瀑状胃者は男女ともに非瀑状胃者に比べてBMIが有意に高く(p<0.01),さらに男性瀑状胃のBMIは25.7±3.2,女性では27.1±4.8と有意差を認めた(p<0.05).【結論】GERDの重症・難治化の原因となる食道裂孔ヘルニアは脊椎後弯により高度化する.女性においては変形性脊椎症の予防がGERDの予防につながる.男性は比較的軽度の肥満が瀑状胃の原因となる可能性があり,肥満の予防がGERDの予防につながる. |