セッション情報 シンポジウム13(消化器外科学会)

肝胆膵外科領域におけるロボット・腹腔鏡下手術の現状と課題

タイトル 外S13-2:

膵腫瘍に対するRobotic distal pancreatectomy

演者 袴田 健一(弘前大・消化器外科)
共同演者 石戸 圭之輔(弘前大・消化器外科), 豊木 嘉一(弘前大・消化器外科)
抄録 ロボット支援手術は,従来の腹腔鏡手術で問題となる動作制限の緩和や,操作性の向上,3D拡大視効果等によって,より精緻な低侵襲手術を可能とすることが期待されている.最近ではロボット支援膵体尾部手術(Robotic DP)が,手術時間,出血量,開腹移行率,膵癌手術R0率,郭清リンパ節個数で,腹腔鏡手術に対して優れているとの報告も見られる.一方,我が国ではエネルギーデバイスの利用制限から凝固切開操作に難があり,必ずしも他国と同条件の手術環境にはないとの課題も抱えている.当科では,平成23年12月に膵尾部癌を第一例としてRobotic DPを開始し,膵癌3例を含む計6例の膵腫瘍に対して実施した.初期成績と現時点での課題について報告する. 適応はR0手術可能な膵癌を含む膵腫瘍とした.腎部分切除,胆摘各1例をロボット下に併施した.膵癌3例はそれぞれ,進行性核上麻痺による運動機能低下,BMI 39兼腎癌合併,血液透析中兼胆石症などの合併症を有していた. 導入1例目は3rd Armを患者左に置き,助手2ポートを含む6ポートで実施した.切離は1st Armにメリーランドバイポーラを装着して主に宇山法で行い,小血管はスモールクリップで閉鎖した.2例目以降は,エネルギーデバイスの利用による凝固止血能の向上と切離操作の時間短縮,不意の出血にも対応可能な術者の両手バイポーラによる把持操作,3rd Armによる術野展開,ポート減数,助手とArmとの干渉を回避などの目的で,患者右に3rd Armを移し,助手ポートを患者左側1本とした.いずれもR0手術可能で,合併切除例を除いた平均手術時間は282分,出血量は133gであった. Robotic DPは定型化しやすく,開腹・腹腔鏡手術よりも精緻な手術が可能なことから,特に膵癌を含む膵腫瘍に対してロボット支援手術としてのメリットが得られやすく,標準治療として有望である.技術的側面では,利用可能なエネルギーデバイスの拡充が望まれるが,今後,デバイスの発達とともに,Armと助手ポートの位置については両者が最も機能する位置を柔軟に設定する必要がある.
索引用語 ロボット支援下手術, 膵体尾部切除