セッション情報 シンポジウム13(消化器外科学会)

肝胆膵外科領域におけるロボット・腹腔鏡下手術の現状と課題

タイトル 外S13-6指:

ロボット支援下手術肝切除術32例の経験と今後の展望

演者 杉岡 篤(藤田保健衛生大・肝脾外科)
共同演者 宇山 一朗(藤田保健衛生大・上部消化管外科), 新田 隆士(藤田保健衛生大・肝脾外科)
抄録 ロボット支援下手術は,腹部外科領域において有力な手段として普及しつつある.我々は,ロボットを用いた肝切除は,通常の腹腔鏡下肝切除の技術的限界を克服する可能性を有していると考え,その適用を試みている.今回の32症例の平均年齢は65.38歳,同時期の当科における肝切除387例と同様であった.当科では開腹肝切除術において,切除領域のグリソン選択的先行遮断を標準術式としている.da Vinci-S system支援手術においても解剖学的系統的肝切除術にグリソン先行遮断を全例に施行した.肝門からのグリソン一括確保では自由度の高い鉗子操作が極めて有用であった.また,特に肝切離面での縫合・結紮による止血操作において有利である.また,ロボット支援下手術にて培われた技術を通常内視鏡下に応用し,3D内視鏡,エネルギーデバイスなどの進歩に伴い,通常腹腔鏡下手術においても更なる発展が期待される.高解像度3Dカメラによる拡大視効果や,振動を排した精密かつ緻密な手術操作で低侵襲性を併せ持ち,開腹肝切除術に対してもアドバンテージが確立した領域がある.現在の進捗状況としては,da Vinci-Si systemの導入により訓練・指導システムの向上,研修から手術実施へのハードルを低くし,安全性,ラーニングカーブのさらなる発展が期待される.また,高度先進医療の承認後には患者負担の軽減,症例数の増加とコストダウン,更なる普及が期待されている.【結語】ロボット肝切除は 腹腔鏡下肝切除の限界を克服し,低侵襲性と安全性をさらに向上させる可能性がある.特に肝切離面での縫合・結紮による止血や系統的肝切除におけるグリソン一括処理において有利である.高解像度3Dカメラ,緻密な操作,ナビゲーションシステムとの親和性など,今後は開腹肝切除を凌駕する可能性もある.
索引用語 肝臓, ロボット支援下手術