セッション情報 シンポジウム14(消化器外科学会)

短期,長期成績からみた消化器外科手術における推奨再建術式

タイトル 外S14-1:

食道再建術における三角吻合,有茎大網被覆,Roux-en-Y胃管延長法の有用性

演者 渡邊 雅之(熊本大大学院・消化器外科学)
共同演者 馬場 祥史(熊本大大学院・消化器外科学), 馬場 秀夫(熊本大大学院・消化器外科学)
抄録 【背景】食道癌切除後の胃管再建は未だ縫合不全や吻合部狭窄が多く在院期間の延長やQOLの低下の原因となっている.一方,咽頭喉頭食道全摘後の再建術においては胃管先端の血行障害を経験する.われわれは頸部食道胃管吻合において三辺外翻三角吻合と右胃大網動静脈領域の有茎大網弁による吻合部の被覆を行っている.また,咽頭喉頭食道全摘症例で胃管の長さが足りない場合や胃管先端部の血行障害を認める場合には右胃大網動静脈のアーケードを温存しながら幽門洞を部分切除しRoux-en-Yを付加することによる胃管の延長を行っている.【目的】食道切除後の胃管再建おけるわれわれの工夫を供覧しその有用性を明らかにする.【対象および方法】1.2010年12月から2012年12月までに三角吻合+有茎大網弁被覆を施行した73例を対象とし縫合不全の有無と経過観察中の狭窄の有無について検討.2.2008年4月から2012年12月までに咽頭喉頭食道全摘を施行した15例を対象に再建方法と術中因子,術後合併症の関連について検討.【結果】1.三角吻合+有茎大網被覆再建における縫合不全は4例(5.4%).経過観察中にブジーを必要とする吻合部狭窄は認めなかった.2.咽頭喉頭食道全摘後の再建は左胃動静脈の血管吻合を伴う胃管再建が2例,胃管+遊離空腸が7例,Roux-en-Y胃管延長法が5例,左結腸再建が1例.胃管再建症例における手術時間の中央値は左胃動静脈の血管吻合を伴う胃管再建が852分,胃管+遊離空腸が805分に対してRoux-en-Y胃管延長法が634分とRoux-en-Y胃管延長法で有意に短かった.再建臓器壊死は1例も認めず,中咽頭まで切除を行った高位吻合例2例で唾液瘻を認めたがいずれも保存的に治癒した.【結語】三角吻合+有茎大網弁被覆法は縫合不全が少ない安全な再建法と考えられた.また吻合部の狭窄がないことからQOL向上に寄与すると考えられた.Roux-en-Y胃管延長法は血管吻合を必要とせず血流の良好な胃管で再建できることから,特に咽頭喉頭食道全摘術において有用と考えられた.
索引用語 食道再建, 胃管再建の工夫