セッション情報 シンポジウム14(消化器外科学会)

短期,長期成績からみた消化器外科手術における推奨再建術式

タイトル 外S14-2:

胸部食道切除後空腸再建の有用性

演者 福原 研一朗(市立藤井寺市民病院・外科)
共同演者 高台 真太郎(市立藤井寺市民病院・外科), 大杉 治司(市立藤井寺市民病院・外科DELIMITER大阪市立大大学院・消化器外科学)
抄録 【目的】胸部食道切除後には胃管再建が用いられるのが一般的である.しかしながら,既に胃切除を受けている場合や同時性胃癌を合併している場合には,胃管を再建に用いることができず,胸壁前経路で結腸再建が選択されることが多い.われわれは空腸の運動機能に着目し,後縦隔経路による有茎空腸再建を取り入れ,術後患者のQOL向上を目指してきた.胃管と有茎空腸再建術による術後患者のQOLについて検討した. 【対象】右開胸によるリンパ節廓清を含む根治切除を施行された胸部食道癌患者のうち,術後合併症を併発しなかった胃管再建症例(G群)と後縦隔経路による有茎空腸再建(胸腔内高位吻合)施行例(J群)を対象とした.【方法】まず術後摂食が安定し退院直前時期である術約3週目頃にBilitec 2000を用い,気管分岐部の高さと横隔膜上約5cmの2箇所で24時間ビリルビンモニタリングを行った(G群:60例,J群:7例).逆流時間の百分率を% timeとして算出した.また術後1年以上経過した外来通院時に症状や摂食状況に関するアンケート調査を行った(G群:78例,J群:6例).【結果】胆汁逆流% timeは,気管分岐部レベルではG群:28.7%,J群:5.4%(p < 0.05)であった.同様に横隔膜上レベルではG群:46.8%,J群:9.9%(p < 0.05)であった.アンケート調査では術前と比較した食事回数は両群に有意差は認められなかった.食事時間では30分以上かける割合がJ群で高く,術前80%以上の食事量を保たれた割合もJ群で高く,更に術前の80%以上の体重を維持できている割合もJ群で高かった.逆流症状を認める割合はG群で高かった.【考察】胃管には貯留機能が残っており,食べやすさはあるが,逆流症状が発症しやすいと考えられた.一方空腸には貯留能がなく食べにくさがあるものの,逆流症状の予防や蠕動によって,最終的には摂食量や体重保持につながったと考えられた.【結語】再検臓器として胃管が使えない場合には,有茎空腸は胃管を越える十分な機能を果たす可能性が示唆された.
索引用語 食道, 再建