セッション情報 シンポジウム14(消化器外科学会)

短期,長期成績からみた消化器外科手術における推奨再建術式

タイトル 外S14-5:

胃全摘術におけるR-Y再建とAboral pouch再建を比較する第II相試験(CCOG1101)

演者 伊藤 友一(愛知県がんセンター中央病院・消化器外科)
共同演者 吉川 貴己(神奈川県立がんセンター・消化器外科), 小寺 泰弘(名古屋大大学院・消化器外科学)
抄録 【緒言】胃全摘術後には胃の貯留能喪失による小胃症状やダンピング症状等が問題となり,生活状況(QOL)に影響を及ぼすことが知られている.貯留機能を補う代用胃を空腸パウチで作成する術式が以前より行われているが,間置型・R-Y型等の再建ルートや空腸パウチの位置(食道側・Y脚部)などその手技は多様であり,その手技の煩雑さやコストの問題などからそれほど普及していないのが実情である.胃全摘術後には,手技的に容易で安全なR-Y再建が最も普及しているが,食物の貯留空間を失い,食事摂取量の減少に伴う体重減少や食事回数の増加等の問題点もある.そこで,R-Y再建とほぼ同様の再建法でY脚部に逆蠕動で側側吻合しパウチを作成するAboral pouch(AP)再建が報告された.我々は胃全摘術後のR-Y再建とAP再建を比較する臨床試験を実施したので,その短期成績を報告する.【目的】胃癌で胃全摘術後のR-Y再建とAP再建をランダム化第II相試験で比較する.【方法】対象は20-80歳でR0切除可能な胃癌に対する開腹および腹腔鏡下胃全摘症例で術中にR-Y群とAP群に割付.QLQ-C30・STO22におけるQOLと体組成(脂肪量や筋肉量)・血液検査での栄養状態・両群の手術の安全性を比較検証する.【結果】2011年7月から2012年11月までに100例登録,R-Y群:51例・AP群:49例で追跡調査中である.両群間に背景因子の差は無し.手術時間の中央値はR-Y群291分・AP群303分(p=0.8476),出血量の中央値はR-Y群125ml・AP群215ml(p=0.6428).両群とも再手術・手術死亡は認めず.術後早期の合併症はR-Y群14例(縫合不全:3例,膵液瘻:3例,腹腔内膿瘍:2例等),AP群12例(縫合不全:1例,膵液瘻:3例,腹腔内膿瘍:3例等)で両群間に合併症発生に差は認めなかった.【結語】Aboral pouch再建は短期的には安全な手技であった.今後もQOL調査や体組成測定等を定期的に行い,引き続きR-Y再建とAboral pouch再建を比較検証する.
索引用語 胃全摘術, 再建法