セッション情報 | シンポジウム14(消化器外科学会)短期,長期成績からみた消化器外科手術における推奨再建術式 |
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タイトル | 外S14-9指:進行下部直腸がんに対する内肛門括約筋切除術における肛門機能再建法 |
演者 | 浅尾 高行(群馬大大学院・病態総合外科学DELIMITER群馬大大学院・がん治療臨床開発学) |
共同演者 | 堤 荘一(群馬大大学院・病態総合外科学), 桑野 博行(群馬大大学院・病態総合外科学) |
抄録 | 直腸肛門進行がんにおける肛門温存術ではがんの根治性と肛門機能温存が求められる.我々は術前温熱放射線化学療法を行い12週のインターバルをおいて根治的切除と恥骨直腸筋の機能再建を伴うISRを積極的に導入してきた.ISR後の肛門機能を温存するための手術手技の工夫と術後成績を検証した. 【方法】1)術前放射線療法(50Gy)に化学療法(カペシタビン内服),温熱療法を併用し治療終了後可能な限り肛門温存術をおこなった.肛門に近接する直腸癌にはISRと肛門機能再建を伴う再建術を駆使して肛門温存を図った. 2)腹腔鏡下直腸切断術の標本の直腸後壁のSMA免疫組織染色標本を作成し恥骨直腸筋の局所解剖を検討した.3)直腸恥骨筋が全長にわたって描出される撮影角度で撮られたMRI画像を術前後で比較検討した.4)肛門機能温存の工夫として,再建術時に 6時方向で 恥骨直腸筋の上縁を再建腸管に吊り上げ固定した. 5)再建腸管の肛門吻合で縫い代を調整することで肛門管内の容積を再建した. 【結果】1)51例の下部進行直腸がんに対する術前治療の効果はclinical CRが50%,病理学的CRが19%であった.治療著効例にISRを導入後,下部直腸がんの自然肛門温存率は90.2%で従来直腸切断術となる症例の半数がISR導入により自然肛門が温存された. 2)腹腔鏡下Miles切除標本の検討で恥骨直腸筋後壁側の上縁には平滑筋と横紋筋が錯綜する筋肉構造を認め恥骨直腸筋の上縁を固定することで筋束の幅を保つ機能を果たしていると考えられた.3)ISR術後の内圧検査では肛門管長は保たれていた.4) MRIで術後も恥骨直腸筋の筋束が術前と同様の位置に保たれており,恥骨直腸筋の固定とanal cushionの再建が Incontinenceをきたさない良好な術後肛門機能に関与していると推定された. 【まとめ】術前放射線治療は根治性と肛門温存の可能性を増加させ,恥骨直腸筋と肛門管の再建術はincontinenceや夜間soilingの防止に寄与し,進行直腸癌の患者の術後QOL保持に果たす役割は大きい. |
索引用語 | 下部直腸癌, 内肛門括約筋切除術 |