抄録 |
【緒言】child変法による膵頭十二指腸切除術(PD)における問題点と課題を明らかにすべく,当院でPDを施行した症例の短期および長期合併症について検討した.【対象と方法】2005年から2012年のPD症例156例を対象とした.検討項目はGradeB以上の膵瘻,DGEなどの短期合併症と,脂肪肝,糖尿病,胆管炎や肝膿瘍などの長期合併症の発生率.また,膵内外分泌機能障害関連合併症(脂肪肝,栄養障害,糖尿病)および胆道感染関連合併症(胆管炎,肝膿瘍)と,術後CT画像所見(残膵の萎縮,胆管拡張)との関連について検討した.再建術式はchild変法,膵管空腸全層縫合+膵貫通空腸漿膜筋層縫合で行った. 対象症例の疾患背景は膵癌が71例,胆道癌が54例,その他31例. 術式はPPPD 135例,SSPPD 6例,PD 15例であった.【結果】(短期合併症) 膵瘻は31例(19.9%),DGEは9例(5.8%)に発生しており,合併症発生症例は39.7%(62例)であった.対象を2010年から2012年の66例に限定すると, 膵瘻は6例(9.1%),DGEの発生はなく(0%),合併症発生症例は27.3%(18例)であった.(長期合併症)各合併症の発生率は脂肪肝が23例(20.9%),糖尿病の発生または悪化が27例(24.5%) ,入院を要する胆管炎が18例(16.4%), 肝膿瘍が5例(4.5%)であった.CT所見で残膵が萎縮していた症例17例中4例(23.5%)に糖尿病を認め, 6例(35.3%)に脂肪肝を認めた.また,残膵が萎縮していなかった症例139例では糖尿病を23例(16.5%)に認め, 脂肪肝を17例(12.2%)に認めた(N.S).胆管が拡張していた症例30例中11例(36.7%)に胆管炎を認め, 2例(6.7%)に肝膿瘍を認めたのに対し,胆管拡張のなかった症例126例では胆管炎が7例(5.6%),肝膿瘍が3例(2.4%)に発生しており,胆管炎の発生については有意差を認めた (P<0.01).【考察・結語】child変法はPDにおいて良い再建法と思われるが, 膵瘻やDGEなどの短期合併症,また胆管炎や肝膿瘍などの長期合併症の発生は手術手技に依存するところが大きいので手技の習熟が必要である. |