抄録 |
【目的】膵頭十二指腸切除術(PD)は,手術手技の改良,周術期管理の向上により短期合併症は改善したが,一方で胆道感染症,急性膵炎,二次性発癌などの中長期合併症にも目を向ける必要がある.そこで,II法再建を施行したPD後の短期・中長期合併症につき検討した.【方法】1981-2012年の肝膵同時切除を除くII法再建のPD 1690例を対象とした.疾患の内訳は悪性疾患1505例(89%),良性疾患185例(11%)であった.術式はPD 539例,幽門輪温存PD(PPPD)1089例,亜全胃温存PD(SSPPD)62例であった.膵液瘻(POPF),胃内容排出遅延(DGE)など在院中に発生したものを短期合併症,術後1年以上に発生した胆道感染症,急性膵炎,二次性発癌を中長期合併症とし,前期(1981-1990年,464例),中期(1991-2000年,536例),後期(2001-2012年,690例)に分けて検討した.膵空腸吻合は膵管空腸粘膜吻合(前期は膵管外瘻/内瘻80%,中後期はno stent法53%)で,胃/十二指腸空腸吻合は全時期とも前結腸ルートで,後期では食物通過が直線化するストレート法を用い,十二指腸空腸吻合部が横行結腸より足側に位置するようにした.【成績】1)短期合併症:在院死亡は前期5.6%,中期2.2%,後期0.4%でた.morbidityは前期31.0%,中期29.9%,後期10.4%で,Grade B/CのPOPFは各6.3%/5.0%,5.6%/3%,6.1%/2%,胃温存術式におけるDGEは各 18.8%,7.3%,3.6%であった.2)中長期合併症:入院を要した胆道感染症は前期12.7%,中期6.0%,後期1.5%で,急性膵炎は1.4%,1.3%,0.6%であった.二次性発癌は残膵癌12例,胃癌10例であった.【結語】no stent法を導入した膵管空腸粘膜吻合やストレート法を用いたII法再建のPDは短期,中長期合併症の改善がみられ有用であったが,残膵癌や胃温存術式における胃癌など二次性発癌に十分注意する必要がある. |