セッション情報 シンポジウム15(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する分子標的薬-最近の動向

タイトル S15-基調講演:

消化器癌の分子標的治療の現状と課題

演者 篠村 恭久(札幌医大・1内科)
共同演者
抄録 近年,多くの分子標的薬が開発され,消化器領域においては,現在,大腸癌や胃癌,消化管間質腫瘍(GIST),肝細胞癌,膵癌,膵神経内分泌腫瘍で分子標的薬が用いられている.消化器癌の治療において,分子標的薬は単独あるいは従来の抗がん剤と併用で用いられて治療成績が向上しているが,薬物療法のみで癌を治癒させることは未だ困難である.癌の治癒を可能にする集学的治療法の開発と共に,既存の分子標的薬に耐性を示す腫瘍に有効な新規分子標的薬の開発が重要な課題である.分子標的薬は,薬剤により異なる特徴的副作用があり,治療の継続のための副作用対策が重要である.分子標的薬は,その特徴から腫瘍の分子異常のタイプにより薬剤を使い分ける個別化治療が期待されている.大腸癌に用いられるセツキシマブとパニツムマブではKRAS遺伝子変異,胃癌に用いられるトラスツズマブではHER2遺伝子増幅,およびGISTに用いられるイマチニブではKIT遺伝子変異が,効果予測マーカーとして実際の臨床に用いられている.しかし,治療効果予測に用いられるバイオマーカーは未だ十分でなく,新規バイオマーカーの開発は重要な課題である.現在,新規分子標的薬が次々に開発されており,今後,分子標的薬を用いた消化器癌の個別化治療が発展することが期待される.
索引用語 個別化治療, バイオマーカー