抄録 |
近年,切除不能・再発胃癌に対しても様々な分子標的薬が検討されているが,現在までにer2陽性胃癌に対するTrastuzumab(T-mab)のみが承認されている(ToGA試験).Her2陽性胃癌という個別化医療が確立しつつあるが,二次治療におけるLapatinibのを検証したTyTAN試験はでは延命効果を証明できなかった.この試験ではFISH陽性であれば適格とされたが,Her2強陽性のサブセットに限るとLapatinibの延命効果が示唆された.ToGA試験においても免疫染色3+またはIHC2+/FISH+のHer2強陽性例ではその効果が大きいことを合わせると,Her2陽性の判定基準を乳癌と同様に強陽性に限定すべきであると思われる.今後,乳癌で効果を証明したPertuzumabやT-DM1などの新薬の導入に対する期待が大きく,周術期への適応拡大も検討すべきである.一方,Bevacizumabの効果を検証したAVAGAST試験をはじめとして,対象を限定(enrich)すbio-markerのしない分子標的薬ではその効果を証明することが困難であると考えられ,治療選択因子となるpredictive bio-markerの確立の重要性が再認識されたが,遺伝子変異の有無と異なり,免疫染色などの定量的なバイオマーカーではcut-off値の設定が重要であり,Randomized phase II試験によるcut-off値の設定が必須である.抗肝細胞増殖因子抗体であるRilotumumabや上皮成長因子受容体の抗体薬(EGFR)であるNimotuzumabでは,第II相試験においてそれぞれcMETやEGFR強陽性症例において大きな上乗せ効果が得られており,これらの症例に限定した第III相比較試験の結果への期待が大きい.さらには,EGFR変異非小細胞肺癌に対するGefitinibが著効するなどのOncogene Addictionとなる遺伝子異常の探索的研究がなされているが,その発見は困難であり,存在したとしてもごく少数例である可能性が高いと思われ,分子標的薬の併用の検討も必要である. |