抄録 |
進行肝細胞癌に対して,RAF, VEGFR, PDGFRなどに対するチロシンキナーゼ阻害剤であるSorafenibは,プラセボと比較した二つのランダム化比較試験において延命効果が示され,標準治療として位置付けられた.このSorafenibの登場により,様々な分子標的薬をはじめとする抗がん剤の開発が盛んに行われている.これまでに進行肝細胞癌に対する初回化学療法として,Sunitinib, Brivanib, Vantedanib, Linifanib, Sorafenib+ErlotinibとSorafenibまたはPlaceboと比較するランダム化比較試験の成績が既に報告されているが,良好な結果は得られておらず,Sorafenibを凌駕する分子標的治療薬は登場していない.また,Sorafenibの二次治療として,BrivanibとPlaceboを比較したランダム化比較試験が行われたが,有意な結果は得られず,Sorafenibに続く有用な抗がん剤も明らかにされていない.さらには,肝動脈化学塞栓術(TACE)の補助療法または併用療法として,SorafenibとPlaceboを比較したランダム化比較試験も行われたが,有意な結果は得られておらず,TACEの補助療法または併用療法としてのSorafenibの意義も明らかにされていない.現在,Sorafenibについては,切除やラジオ波焼灼術後の補助療法,TACEとの併用療法,進行癌に対する他の抗癌剤の併用療法の開発が進んでいる.また,Sorafenibと本邦でよく行われている肝動注化学療法であるCisplatin肝動注や5-FU+Cisplatin肝動注療法の併用のランダム化比較試験も行われている.他の分子標的薬では,TACEの併用療法,進行癌の一次治療,Sorafenib不応の二次治療としての開発が世界的に行われている.このように,肝細胞癌に対してSorafenibなどの分子標的治療薬を中心に新薬の開発が盛んになってきており,今後,肝細胞癌の全身化学療法の更なる治療成績の向上が期待されている. |