セッション情報 シンポジウム15(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)

消化器癌に対する分子標的薬-最近の動向

タイトル 消S15-5指:

膵癌に対する分子標的薬-最近の動向

演者 加藤 俊介(東北大加齢医学研究所・臨床腫瘍学)
共同演者
抄録 近年進行再発膵がんに対する薬物療法は,FOLFIRINOXやアルブミン懸濁型パクリタキセル/ゲムシタビン併用療法など,殺細胞効果薬剤による多剤併用療法の開発により改善が認められてきている.その一方で,膵がんに対する分子標的薬剤の開発は残念ながらほとんど成功を収めていない.分子標的薬剤でこれまでに唯一成功を収めたものはEGFRを標的とした小分子チロシンキナーゼ阻害剤エルロチニブであり,一次治療においてゲムシタビンの併用療法がゲムシタビン単独より有意に生存期間の延長を示している.しかし,その上乗せ効果は決して満足のいくものではない.むしろ日本人に多いとされる間質性肺炎などの有害事象が懸念されるため,現在も広く普及しているとは言い難い.最近,未治療進行膵がん症例を対象に,血管新生に関与するチロシンキナーゼを標的とした小分子マルチチロシンキナーゼ阻害剤であるアキシチニブについて,ゲムシタビンへの併用効果を検証した第III相試験の結果が報告されたが,結局ゲムシタビン単独療法を上回ることができず途中中止となっている.膵がんに対する血管新生阻害治療については,これまでにもベバシズマブ,アフリバセプトなどの抗体医薬とゲムシタビンとの併用療法も試みられてきたが,結局いずれの治療においても上乗せ効果が見られず,膵がんにおいては血管新生阻害治療の開発は困難と思われる.その他の標的としては,インスリン様成長因子1型受容体(IGF-1R)を標的としたモノクローナル抗体のガニツムマブについてもゲムシタビンへの併用効果を検証した第III相国際共同治験が行われていたが,主要評価項目である全生存期間を統計学的に有意に改善する可能性は低いと判断されたため,やはり開発が断念されている.本シンポジウムでは,これまでの膵がんに対する分子標的薬剤の第III相試験の結果を振り返り問題点を考えるとともに,現在開発中の薬剤について解説する.
索引用語 膵がん, 分子標的薬