セッション情報 |
シンポジウム15(消化器病学会・肝臓学会・消化器外科学会合同)
消化器癌に対する分子標的薬-最近の動向
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タイトル |
消S15-7指:進行性膵神経内分泌腫瘍に対する分子標的薬(エベロリムス,スニチニブ)の効果と薬剤選択
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演者 |
五十嵐 久人(九州大大学院・病態制御内科学) |
共同演者 |
伊藤 鉄英(九州大大学院・病態制御内科学) |
抄録 |
[背景] 膵神経内分泌腫瘍(PNET)は希少疾患とみなされていたが,本邦では近年増加傾向にある.基本的に悪性腫瘍であり,外科的治療が第一選択である.2011年に進行性PNETに対する,エベロリムスおよびスニチニブの多施設共同第III相試験(プラセボ対照,無作為化,二重盲検)の結果が同時に報告され,同等の無増悪生存期間 (PFS) 延長効果が示された.日本人患者に対しては,1) RADIANT-3の日本人サブグループ解析結果でPFSがエベロリムス(E)群で19.45カ月,プラセボ(P)群で2.83カ月であった.2) 日本人進行性PNET患者12名を対象としたスニチニブの第II相試験の結果では奏効率が50%,12カ月後のPFS probabilityは71%であった.両薬剤とも日本人患者にとって有用と考えられるが,それぞれの有害事象を考慮し患者プロファイルに応じた薬剤選択が提唱されている.[目的]当科症例を検討し,NETに対する分子標的薬の選択について考察する.[対象] A)エベロリムス:当科で投与されたPNET 31症例のうち,RADIANT-3に参加した21症例,B)スニチニブ:PNET4例,NEC 1例の計5症例.[結果] A) E群13例,P群8例に振り分けられた.Disease Control Rate (DCR)はE群76.9%(奏効率7.6%),P群47.7%,PFSはE群27.6カ月,P群2.8カ月であった.P群症例はPD後クロスオーバーし,結果的に全例エベロリムスで治療された.治療期間中央値は745日で,全症例の3年,4年生存割合は85.7%と66.7%であった.B) 5症例のDCRは100%(PR 1名,SD 4名)であった.短期間で病勢が進行したガストリノーマ症例はPRを示し,DIC合併NEC症例はスニチニブ投与後病勢コントロールが可能となった.有害事象は1)エベロリムスでは多くが軽度だが,間質性肺炎や感染症併発例が認められた.2)スニチニブでは手足症候群や倦怠感が主で重篤なものは認めなかった.[結語] エベロリムスは日本人の進行性PNET患者に対してlong SDが期待できる薬剤である.スニチニブは抗腫瘍効果が期待できるが比較試験による今後の検証が必要である. |
索引用語 |
膵神経内分泌腫瘍, 分子標的薬 |