セッション情報 シンポジウム16(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Endoscopic oncology

タイトル 消S16-4:

小腸癌症例の検討~小腸内視鏡による診断率向上とその予後~

演者 佐々木 清貴(北海道消化器科病院)
共同演者 加藤 貴司(北海道消化器科病院), 堀田 彰一(北海道消化器科病院)
抄録 <はじめに>従来,小腸癌をはじめとする小腸腫瘍は同定困難,予後不良とされてきたが,画像診断の進歩によりその概念は大きく変革した.DBE,VCEによる内視鏡学的アプローチにてより早期に腫瘍を確定診断することが可能となり診断学は飛躍的な進歩を遂げた.今回我々は当院で精査加療された小腸癌症例につき検討を行った<方法>当院にて内視鏡学的精査加療施行した小腸癌症例につき統計学的検討をおこなった.<結果>当院においては777例の小腸内視鏡検査を施行し,DBEによる確定診断を行った腫瘍症例は68症例(悪性腫瘍30例)であった.悪性腫瘍においては小腸癌,悪性リンパ腫,GISTなどの頻度が高かった.1992年~2012年の21年間で当院にて精査加療施行された原発性小腸癌症例は10例であり,全消化管癌における手術の0.2%であった.10例中8例は2003年DBE導入後の症例であり,小腸内視鏡検査にて病変の同定率は向上した.全例治療(9例手術 1例内視鏡的治療)施行され,stage1が3例,stage2が4例,stage3が2例,stage4が1例であった.Stage3a以下の症例は長期生存し,小腸癌関連死は認められなかった.Stage1の早期癌症例は隆起型の形態にて2例に内視鏡切除を施行したが,1例はsm浸潤により追加切除を施行した.早期癌症例においては大腸癌の発癌機転と同様のadenoma-carcinoma sequenceおよびde novo癌の所見が認められた.平均腫瘍径は41.7mmであったが,腫瘍径が20mm以上の症例においては貧血や下血などの前駆症状を認めており,有症状期の精査にて治癒切除の可能性が高いことが示唆された.予後はstageに比例しており,リンパ節転移の有無が重要であったが,stage3aの症例には術後補助化学療法施行により再発なく経過している.また症例中異時性多発癌の1例を認めた.<結語>小腸癌の予後はstageに比例しており,症候の出現しやすい小腸癌においては早期に病変を指摘できる可能性がある.今後,適応拡大されたVCEにより診断の更なる向上が期待されるとともに,治療指針の検討がのぞまれる.
索引用語 小腸癌, 小腸内視鏡