セッション情報 シンポジウム16(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Endoscopic oncology

タイトル 内S16-6:

EUS-FNAによるリンパ腫の診断

演者 丸田 明範(岐阜大附属病院・消化器内科)
共同演者 安田 一朗(岐阜大附属病院・消化器内科), 森脇 久隆(岐阜大附属病院・消化器内科)
抄録 表在リンパ節腫脹を伴わないリンパ腫(ML)の診断には,縦隔鏡・腹腔鏡あるいは開胸・開腹によるリンパ節生検が必要とされる.こうした外科的手技は迅速な施行が困難であること,さらに侵襲が大きいため術後の合併症が多く,全身状態が極めて不良な症例には施行困難なことが欠点として挙げられる.こうした外科的手技に比べ経消化管的にアプローチするEUS-FNAは縦隔・腹腔内のリンパ節を比較的容易に穿刺し病理検体を採取することが可能である.しかしその一方で採取検体量が少ないため,診断能については疑問視する意見がある.【目的】ML診断におけるEUS-FNAの診断能とその利点について明らかにする.【対象】2005年6月~20012年12月にEUS-FNAを行ったML疑い症例292例.【方法】症例の背景因子,病理組織診断結果,flow cytometry(FCM)による表面マーカー解析,G-band法による染色体分析結果および最終診断について調査した.【結果】EUS-FNAは292例 (ASA-class4の全身状態不良例10例を含む)に施行.縦隔106病変/腹腔内186病変(脾13例/左副腎5例/膵4例/右腎3例/左腎2例を含む),縦隔は気管前・前縦隔以外のほぼ全領域(主に気管分岐部ならびに気管傍領域),腹腔内は下方左側は総腸骨動脈分岐部付近,右側は右腎下極付近までの穿刺アプローチが可能であった.192例が最終的にMLと診断され,うち188例(97.9%)がEUS-FNAで診断,172例(89.5%)においてWHO分類に基づく組織型分類が可能であった.FCMは149例(77.6%)において特徴的なパターンを呈し,特に最終診断がB-cellリンパ腫であった165例においては140例(84.8%)で診断に有用であった.染色体異常は59例(30.7%)に検出された.EUS-FNA手技に伴う重篤な偶発症の発生は1例もみられなかった.【結語】 EUS-FNAは縦隔から腹腔内にかけて広範囲な領域を対象に施行でき,その診断能は極めて高く組織型分類も約90%に可能であった.またFCMはB-cellリンパ腫の診断に有用であり,結果が迅速に判ることから,特に全身状態不良なaggressive ML例において迅速に治療を開始するためにその併用は有用性が高い.
索引用語 EUS-FNA, リンパ腫