セッション情報 シンポジウム16(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Endoscopic oncology

タイトル 内S16-7:

ERCP下に得られた微量サンプルを用いた肝外胆管癌における血管内皮増殖因子(VEGF)-C過剰発現の評価

演者 土橋 昭(東京慈恵会医大・内視鏡科)
共同演者 今津 博雄(東京慈恵会医大・内視鏡科), 田尻 久雄(東京慈恵会医大・内視鏡科DELIMITER東京慈恵会医大・消化器・肝臓内科)
抄録 【目的】血管内皮増殖因子(VEGF)ファミリーであるVEGF-Cタンパクの過剰発現は,肝外胆管癌(ECC)のリンパ節転移と深く関係していると報告されており,これらの報告では,VEGF-Cタンパク過剰発現のインデックスとして,手術標本の免疫組織染色の染色度が用いられてきた.これまでにECCにおけるVEGF-Cタンパク過剰発現を術前の腫瘍組織を用いて評価を行った報告はみられない.本研究では,術前のERCP下に得られた微量サンプルを用いてECCのVEGF-Cタンパクの過剰発現の評価が可能であるか,リアルタイムPCR法にてVEGF-C mRNAを測定し検討した.
【方法】2011年4月から2013年2月に,ECCが疑われERCPを施行する患者を対象とし,前向きに評価を行った.術前にERCP下生検またはブラシ擦過から得られたサンプルのVEGF-C mRNAを,リアルタイムPCR法を用いて定量した.ECCの手術標本の免疫組織染色を用いたVEGF-Cタンパクの過剰発現の程度をreference standardとし,内視鏡サンプルを用いてVEGF-Cタンパクの過剰発現を評価することが可能であるか検討した.ECCに対する有用な診断マーカーであると報告されているS100P mRNAの測定も同時に行い,ERCP下に得たサンプルが肝外胆管癌細胞を含んでいるか否かの評価に用いた.
【成績】28例に対し,ERCPを行い生検またはブラシ擦過によってサンプリングを行った.21例がECCと診断され,7例は良性胆管狭窄であった.21例中,外科切除が施行され,かつ術前サンプルのS100P mRNAが陽性とされたECC症例は11例であり,それらに対して最終解析を行った.ROC解析を用い,カットオフ値を3.85と設定した所,術前のERCP下サンプルのVEGF-C  mRNA発現量のVEGF-Cタンパク(手術標本)の過剰発現に対する感度は83.3%,特異度は100%,診断精度は90.9%であった.
【結論】ERCP下に得られたサンプルを用いたECCのVEGF-C mRNAの定量は,術前のVEGF-Cの過剰発現予測に有用である.
索引用語 VEGF, 胆管癌