セッション情報 シンポジウム16(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Endoscopic oncology

タイトル 内S16-8:

膵液の次世代シークエンサー解析および腫瘍マーカー測定による膵疾患診断

演者 高野 伸一(山梨大・1内科)
共同演者 深澤 光晴(山梨大・1内科), 榎本 信幸(山梨大・1内科)
抄録 【目的】ERCP下に採取可能な膵液は,いまだ膵疾患診断において極めて有用な検体試料である.今回膵疾患診断の精度を改善する目的に,次世代シークエンサーによる膵液遺伝子変異検索および膵液腫瘍マーカーの有用性評価を行った.【対象と方法】膵疾患精査目的に施行したERCP検査時に採取した膵液を用い,腫瘍マーカー測定および遺伝子変異を検索した.検討1:膵液152検体(正常9例,慢性膵炎22例,膵癌39例,IPMN82例)を対象とし,抽出したDNAからターゲットとした癌関連46遺伝子をmultiplex PCRにて増幅後,次世代シークエンサーにてシークエンスを行った.疾患別に遺伝子変異の出現頻度を検討した.検討2:膵液腫瘍マーカーを測定した118例を対象とした(膵癌33例,IPMN以外の良性膵疾患33例,IPMN52例).採取した膵液でCEA, CA19-9, CA125, DuPAN2, KL-6を測定し,膵癌とIPMNを除く良性膵疾患の比較およびIPMNの良悪性の鑑別能を検討した.【結果】結果1: 膵液抽出DNAからの遺伝子変異検索で,KRAS,TP53変異に加え,GNAS変異を慢性膵炎の4.5%,膵癌の7.7%,IPMNの41.5%に認めた.慢性膵炎でのGNAS変異検出例は微小膵嚢胞が存在しており,膵癌でGNAS変異を認めた症例はIPMNが併存していた.結果2:膵癌およびIPMN以外の良性膵疾患の膵液腫瘍マーカーを比較したところ,膵癌と良性膵疾患でそれぞれCEAは中央値15.4 mg/dl (n=33), 1.4 mg/dl (n=33)で有意差 (p<0.001) を認め,CEAのcut off値を10.2と設定すると,良悪性の鑑別において感度75.8%, 特異度97%であった.IPMNについては,良性及び悪性の比較でCEAはそれぞれ中央値21.6 mg/dl (n=18), 751.9 mg/dl (n=6) で有意差 (p=0.03) を認めたが,他のマーカーでは有意差を認めなかった.【結論】膵液の網羅的癌関連遺伝子変異検索の結果から,GNAS変異がIPMNで特異的に検出され,膵疾患の質的疾患に寄与すると考えられた.また,膵液の腫瘍マーカーの検討から,CEAが膵癌の診断およびIPMNの良悪性鑑別に有用であった.
索引用語 膵液, 次世代シークエンサー