セッション情報 シンポジウム16(消化器内視鏡学会・消化器病学会合同)

Endoscopic oncology

タイトル 内S16-10:

切除不能膵癌におけるEUS FNA検体を用いた網羅的ゲノム解析による個別化治療確立の試み

演者 須藤 研太郎(千葉県がんセンター・消化器内科)
共同演者 横井 左奈(千葉県がんセンター・がんゲノムセンター), 山口 武人(千葉県がんセンター・消化器内科)
抄録 【目的】近年,遺伝子解析技術の進歩により癌細胞ゲノムの網羅的分子情報解析が可能となっている.切除不能膵癌においてもEUS FNAの普及により癌細胞の採取が可能となっており,個々の分子生物学的特性に応じた個別化治療への期待が高まっている.われわれは切除不能進行膵癌患者を対象として,治療前に採取したEUS FNA検体を用い,アレイCGH法(array-based comparative genomic hybridization) により癌細胞ゲノムコピー数異常の網羅的解析を行い,新規バイオマーカー探索を目指す試みを進めている.本発表ではこの取り組みにつき報告する.【方法】化学療法前の切除不能進行膵癌患者よりEUS FNAにより生検組織を採取・凍結保存を行い,DNAマイクロアレイ(アジレント・テクノロジー Human Genome CGHマイクロアレイ 4×44k)を用いた癌細胞ゲノムコピー数異常の網羅的解析を行った.また,各検体ごとにKRAS変異の有無についても検討を行った.【成績】これまで174例の切除不能膵癌患者よりEUS FNAにより膵癌組織を採取・凍結保存し,57例(GEM+S-1療法 22例,GEM療法 35例)についてアレイCGH解析を施行した.微小なEUS FNA検体であっても平均2μg程度のDNA抽出は可能であり,KRAS変異は57例中48例(84%)に認められた.アレイCGH解析では膵癌にみられる代表的な癌抑制遺伝子であるP16,SMAD4のlossを各々68%,51%の症例に認め,これらは過去の切除標本や細胞株を用いた検討と同等の成績であった.【結論】微小なEUS FNA検体であってもアレイCGH法による網羅的ゲノムコピー数解析は可能であり,切除標本を用いた過去の報告と比較し再現性のある結果であった.本発表では治療効果などの臨床的因子との関連についても報告する.
索引用語 膵癌, EUS FNA