セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-4:

当院における抗血栓薬の運用と内視鏡新ガイドラインの評価

演者 斯波 将次(大阪市立大附属病院・消化器内科)
共同演者 永見 泰明(大阪市立大附属病院・消化器内科), 杉森 聖司(大阪市立大附属病院・消化器内科)
抄録 背景と目的:当院では,平成25年9月まで,生検時には抗血栓薬を休薬を徹底していたが,抗血栓薬ガイドラインの改訂をうけ10月より全科でこの運用を開始した.しかし,開始早々に2例の患者が上部消化管生検後吐下血をきたした.今回,我々は,過去の生検後出血および抗血栓薬中止時の合併症について当院における成績を明らかにし,抗血栓薬の新ガイドラインの使用における課題を検討するとともに,導入当初の混乱と対処についても紹介する.方法:電子カルテが導入された2007年5月から2013年3月までの約6年間に上部消化管内視鏡検査を受けたのべ37544例の患者を対象とし内視鏡ファイリング,看護記録,電子カルテから生検の有無,抗血栓薬の種類と内服の有無,既往歴の有無,吐下血の有無についてデータ抽出し検討を行った.結果:生検が行われたのは,のべ12200例(32.5%)でこれらの内,抗凝固薬内服は231例(1.89%),アスピリン内服は1763例(14.45%),アスピリン以外の抗血小板薬内服は2425例(3.48%)で生検後に吐下血をきたしたのは10例(0.08%,死亡0%)であった.新ガイドライン導入前の生検後出血は8例(0.07%),導入後の出血は,2例(2/799, 0.25%, P=0.09)で有意差はなかった.新ガイドライン導入後早期に2例の吐下血が見られたため1ヶ月後より生検鉗子をすべて2.8mm径から2.0mm径への変更を行った.変更前の出血は10例(0.09%)であったが,変更後は現在までの617例に出血は見られていない’(0%).一方,抗血栓薬を中止し,1例が心筋梗塞で死亡し,1例が脳梗塞となった.新ガイドラインの運用に関しては,外来,入院それぞれでやや混乱することもあったが導入後5ヶ月を経て運用面における問題もしだいに解消されている.結果:新ガイドラインは運用面において,慣れも必要であるが,休薬によるリスクは大きく比較的妥当なものであると思われた.当日は当院で経験した導入当初の混乱と対応についてもあわせて紹介する.
索引用語 抗血栓薬, 内視鏡下生検