セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-5:

上部消化管内視鏡検査における経鼻内視鏡用生検鉗子の安全性と有効性

演者 石川 茂直(香川県立中央病院・消化器内科)
共同演者 稲葉 知己(香川県立中央病院・消化器内科), 河合 公三(香川県立中央病院・消化器内科)
抄録 【背景】我々は2011年3月より,血栓偶発症予防目的に生検鉗子を小型化し,抗血小板薬は複数薬剤使用も非休薬で生検を行う方針とした(抗凝固薬はヘパリン置換).2012年に新たな抗血栓薬休薬ガイドラインが示され,抗血小板薬は単剤では非休薬で生検可能とされたが,その根拠となるエビデンスは少ない.抗血栓療法施行例に出血予防の観点より,生検鉗子を小型化する報告もあるが,精度等十分には検討されていない.そこで,小型生検鉗子の精度と安全性(出血偶発症)に関して検討を行った.
【方法】対象は,2011年3月からの1年間に上部内視鏡検査を施行された5374例.生検鉗子は経鼻内視鏡用(オリンパス社製FB-231K)を用い,病理診断不能とされた検体に関する生検精度を検討した.また,粘膜下層の太い血管損傷は生検後出血に関与すると推察されるため,検体の粘膜筋板の有無を調査した.全生検施行例に関して,顕性出血の有無を調査し,抗血小板薬非休薬で生検を行った例は,出血に関するアンケートと生検後1週間の貧血進行を調査した.
【成績】5374例中,抗血栓療法を施行されていた例は19.6%,1055例(抗血小板薬822例,抗凝固薬233例)であった.得られた検体数は食道266,胃2025,十二指腸172で,診断不能検体は,それぞれ0.8%(2/266),0.7%(15/2025),0.6%(1/172)であった.粘膜筋板採取率(判定不能,進行癌症例除く)はそれぞれ,11.0%,27.8% ,19.6%で,胃の部位別では胃上部と中部は,下部より高い採取割合だった(p<0.00001).生検後出血は,抗血栓薬非服用群の胃生検で1例(0.095 %)(1/1049)認めたが,抗血小板薬非休薬下生検65例には,顕性出血やHb2g/dl以上の低下は認めなかった.生検後顕性出血に関して,更に2013年2月まで追加調査したが出血例は認めなかった.
【結論】抗血小板薬非休薬下の生検において,小型生検鉗子は精度も高く安全性の向上に寄与しうる.ただし,粘膜筋板を超えての組織採取が起こりうることも認識し,内視鏡下での十分な止血確認が必要である.
索引用語 抗血小板薬, 生検