セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-6:

当院における抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡検査の現状

演者 藤田 穣(川崎医大・消化管内科)
共同演者 塩谷 昭子(川崎医大・消化管内科), 春間 賢(川崎医大・消化管内科)
抄録 【背景】2012年7月に抗血栓薬服用患者に対する消化器内視鏡診療ガイドラインが改訂された.これまでの出血予防を重視したものから抗血栓薬の休薬による血栓塞栓症の誘発に配慮され作成されたが,エビデンスレベルが低く臨床の場での検証が必要である.当院では同年8月1日よりこのガイドラインに基づき,アスピリン単独は生検可能,ワルファリン単独は,原則検査当日のPT-INR値で生検の可否を判断している.【目的】抗血栓薬服用患者の上部及び下部内視鏡検査施行症例を対象とし,内視鏡検査の現状,特に生検の可否と生検後の出血について検討した.【結果】2012年8月から2013年3月まで上部内視鏡検査3172件,下部内視鏡検査1405件施行した.抗血栓薬服用は628件(14.0%,男性439件,女性189件,平均73歳±9歳)であった.抗血栓薬の内訳は,アスピリン258件(41.1%),ワルファリン233件(36.5%),チエノピリジン92件(14.6%,クロピドグレル83件),シロスタゾール77件(12.3%),ダビガトラン28件(4.5%),その他47件(7.6%),重複内服101件(16.1%).生検施行症例177件の内訳は,アスピリン73件,ワルファリン48件,シロスタゾール21件,ダビガトラン25件,プラザキサ10件,その他15件,重複14件.ワルファリン内服生検患者の内視鏡検査当日の平均PT-INR±SDは1.5±0.4(0.98-2.5)で,非生検患者1.89±0.77(0.98-5.97)と比較して有意に低値(p<0.001)であった.生検後,出血に対してトロンビン散布した症例は4例で,ワルファリン内服症例3例(平均PT-INR 1.69,幅1.12-2.28)内1例はクリッピングを施行(PT-INR 2.28),アスピリン内服症例1例であった.貧血の増悪や入院を要する合併症を来した症例はなかった.偶発症は生検時にoozingを認めクリッピングを施行した症例を1例(0.1%)認めた.【結語】アスピリン単独内服患者およびワルファリン単独内服で当日のPT-INR値が2.5以下の患者に対する生検は安全に施行可能と考えられた.
索引用語 抗血栓薬, 消化器内視鏡検査