セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-7:

抗血栓薬に関する新ガイドラインは適切か?改訂後1年間の内視鏡下生検および治療における偶発症の評価

演者 東納 重隆(新東京病院・消化器科)
共同演者 森田 靖(新東京病院・消化器科), 細野 和宏(新東京病院・消化器科)
抄録 【はじめに】2011年10月のJDDWにおいて抗血小板薬,抗凝固薬使用ガイドラインの改訂案が提示され,その後2012年7月に内視鏡学会より公示された.当院では2012年1月より新ガイドラインに準じて生検や治療を実施しており,新ガイドラインが適切であるのかどうかを検討した.【検討対象】生検に関しては2012年1月から12月までの1年間に実施した治療内視鏡以外の上部消化管内視鏡検査3075症例を対象とし,治療に関しては2007年1月から2012年12月までの5年間に実施した胃ESD症例356症例を対象とした.【生検に関する結果】薬剤なし群910症例1950生検,抗血栓薬休薬群65症例171生検,抗血栓薬継続群178症例361生検であった.抗血小板薬単独継続が129症例275生検,抗凝固薬単独継続が17症例40生検であった.ガイドラインに準拠しない複数の抗血小板薬継続が15症例25生検,アスピリン+ワルファリン継続が5症例5生検であった.生検後に鉗子圧迫やアルト散布などの簡易な止血を実施した症例は抗血栓療法服用症例に多い傾向にあった.clipping止血や止血鉗子でのsoft凝固などの積極的止血術を実施した症例を休薬群に1例,継続群に1例認めたが,後出血症例は認めなかった.【治療に関する結果】今回の検討では抗凝固薬を服用中の症例は除外した.薬剤なし群(N=247),休薬群(N=52),LDA継続群(N=12),DAPT群(N=24)に分類して検討すると,休薬群およびDAPT群(DAPT服用→LDA継続)において後出血の危険性が有意に多かった(p=0.017, p<0.001, Log rank test)が,LDA継続群においては薬剤なし群と後出血の危険性に差を認めなかった(p=0.877).【まとめ】生検においてはガイドラインに準拠した抗血栓療法継続症例において明らかな後出血の合併症はなく,ガイドラインは適切と思われた.治療に関してはDAPT服用症例でLDAを継続して治療した症例においては治療後の後出血の危険性が非常に高く,DAPTの再開時期や後出血予防策に更なる検討が必要と思われた.
索引用語 抗血栓薬, 内視鏡治療