セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-8:

内視鏡時の抗血栓薬休薬新基準の実態:札幌コンセンサスのおける多施設前向き調査

演者 間部 克裕(北海道大病院・光学医療診療部)
共同演者 勝木 伸一(小樽掖済会病院・消化器病センター), 加藤 元嗣(北海道大病院・光学医療診療部)
抄録 【背景と目的】近年,内視鏡対象者における抗血栓薬服用者が増加している.抗血栓薬休薬による血栓症の危険が明らかになり日本消化器内視鏡学会の新ガイドラインでは内視鏡検査は全ての抗血栓薬が休薬せず可能と改訂された.北海道地区において抗血栓薬処方科と共同で作成した休薬基準の適応状況と合併症の実態を明らかにすることを目的とした.【方法】2009年に札幌市近郊の消化器内科医,抗血栓薬の処方科が集まり消化器内視鏡学会の指針を元に血栓症に配慮した休薬基準,札幌コンセンサスを策定した.妥当性を検証するため参加施設においてアンケート調査と内視鏡室の集計による前向き調査を開始した.2012年7月の内視鏡学会ガイドライン改訂時に休薬基準の一部改訂を行った.休薬の実態と偶発症について前向き調査のデータを用いて検討した.【結果】2010年11月より2013年1月までに北海道内16施設より5349例が登録された.抗血栓薬はアスピリンが54%,チエノピリジンが20.4%,ワルファリン18.4%,シロスタゾール8.7%が,基礎疾患として脳梗塞29.6%,虚血性心疾患25.6%,心房細動11.4%が登録され,休薬のハイリスク群と登録されたのは7.4%であった.医師の判断により基準と異なる休薬として登録された症例を7.4%に認めた.アンケート調査の回収率は75.8%で出血が1.2%,血栓症が0.5%であったが,症状調査によるアンケート調査であるため,偶発症については登録施設において抗血栓薬の有無に関わらず全例登録とし詳細な検討を行っている.2012年3月までの詳細な検討では出血例は15/2763(0.54%)で,血栓症は2例(0.07%)であった.休薬基準通りの2424例では血栓症を認めず,基準より長い休薬を行った334例から2例の脳梗塞を認めた.【結論】血栓症に配慮した抗血栓薬の休薬新基準は殆どの症例で適応可能であり,偶発症の面でも容認可能な範囲と考えられた.今後,血栓症危険例,出血危険例の特徴や対応など更に詳細な検討を要する.
索引用語 抗血栓薬, 休薬基準