セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-9:

抗血栓療法内服薬別における,胃ESD後出血のリスクおよび時期についての検討

演者 林 智之(石川県立中央病院・消化器内科)
共同演者 山田 真也(石川県立中央病院・消化器内科), 土山 寿志(石川県立中央病院・消化器内科)
抄録 【目的】抗血栓薬服用患者のESDは後出血が多く,服薬再開後の出血が目立つという報告が散見される.胃ESDにおいて,抗血栓療法内服薬別に後出血率,後出血発症日,内服再開後の後出血率を検討する.【方法】2002年3月~2012年6月の胃ESD症例1719病変の中から,穿孔例を除外し,抗血栓療法について詳細に確認できた1617病変を抽出し,抗血栓療法を治療前に行っていた277病変を対象とする.薬剤別に後出血率,後出血発症日,後出血時の内服再開率をレトロスペクティブに検討する.また2002年~2007年(前期群)と,2005年以降のガイドラインを踏まえた術前休薬期間の比較的短い(低用量アスピリン3日間,チエノピリジン誘導体5日間,両者併用7日間,ワルファリン3,4日間で治療当日に原則PT-INR<1.5確認) 2008年以降(後期群)の後出血率についても検討する.【成績】内服薬別の後出血率は,チエノピリジン誘導体内服あり群13.3%,同内服なし群2.7%と,内服あり群で有意に後出血率が高かった(p<0.001).治療後の後出血発症日の検討では,チエノピリジン誘導体内服あり群10.3±4.9日,同内服なし群4.2±4.3日と,内服あり群で有意に治療後の後出血の時期が遅かった(p=0.03).後出血時の内服再開率は,チエノピリジン誘導体内服あり群91.7%,同内服なし群20.0%と,内服あり群で有意に後出血時の内服再開率が高かった(p=0.003).また前期群と後期群の後出血率は有意差を認めなかった.【結論】チエノピリジン誘導体内服患者は,抗血栓薬内服患者の中でも特に強いESD後出血のリスク因子となり,ほとんどの症例で内服再開後の遅い時期に後出血を来たした.ESD後フォローアップ内視鏡は,後出血改善につながらないという報告がある一方,抗血栓療法患者のフォローアップ内視鏡の有用性の報告もあり,一定のコンセンサスはない.後出血率の極めて高いチエノピリジン誘導体内服患者のフォローアップ内視鏡は後出血率を改善するか,術後何日目に行うべきかなどの前向き検討が必要と考える.
索引用語 ESD, 抗血栓