セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-11:

胃ESDにおける周術期ヘパリン置換例の後出血の検討

演者 古畑 司(虎の門病院)
共同演者 布袋屋 修(虎の門病院), 貝瀬 満(虎の門病院)
抄録 【背景】抗血栓薬新ガイドラインでは抗凝固薬内服者の内視鏡治療はヘパリン置換を推奨しているが,ヘパリン置換による出血リスク・血栓塞栓リスクのエビデンスは明らかでない.特に出血リスクの高い胃ESDではヘパリン置換に伴う大量出血も危惧される.【目的】胃ESD患者においてヘパリン置換のよる後出血・血栓塞栓症への影響を明らかにし,適切な術中・術後管理を検討する.【対象と方法】2005年4月1日~2012年3月31日までに胃ESDを行った1422例(1622病変)を対象とし,後出血率,後出血までの日数,血栓塞栓症の発生の有無について検討した.後出血は吐下血,または,Hb 2g/dl以上低下し,内視鏡的に出血を同定できたものとした.ESD前に抗凝固薬をヘパリンに置換し,術後4日以内にヘパリンを再開した症例をヘパリン置換と定義した. 【結果】1)全症例での後出血84例(5.9%).抗血栓療法191例中,抗血小板単剤97例,抗凝固薬単剤17例,抗血栓療法多剤(抗血小板薬+抗凝固薬)39例,周術期ヘパリン置換38例であり,後出血はそれぞれ,7例(7.2%),0例(0%),6例(15.4%),14例(36.8%)と,ヘパリン置換群で有意(P<0.001)に後出血率が高かった.2)出血リスクに関連する因子を多変量解析すると,ヘパリン置換(オッズ比11.68[95%CI 5.77-23.64],P<0.001)と抗血栓療法多剤(オッズ比3.64[95%CI 1.47-9.00],P<0.001)が有意な後出血関連因子であった.3)後出血は全体ではESD翌日と一週間後に多く発症したが,ヘパリン置換では術後6日前後と遅れて発症する傾向にあった.4)ヘパリン置換群での血栓発生は1例(2.5%)であり,術後翌日からのヘパリン置換にもかかわらず,7日目に腎梗塞を発症した.【考察】ヘパリン置換胃ESDでは後出血が約4割と高率であり,遅発出血の傾向にある.潰瘍底露出血管の予防凝固を通常以上に十分行い,遅発出血に備えて術後のsecond look,時にはthird look内視鏡を考慮すべきである.ヘパリン置換を行なっても血栓症発症がありうることを想定し,血栓症が発生時には速やかに治療する必要がある
索引用語 ESD, ヘパリン