セッション情報 シンポジウム17(消化器内視鏡学会)

抗血栓薬と内視鏡-新ガイドラインの評価

タイトル 内S17-13:

ヘパリン置換症例における大腸EMR/ESD後出血の検討

演者 高田 俊介(広島市立安佐市民病院・内視鏡内科)
共同演者 永田 信二(広島市立安佐市民病院・内視鏡内科), 木村 茂(広島市立安佐市民病院・消化器内科)
抄録 【はじめに】平成24年, 日本消化器内視鏡学会では抗血栓薬服用者に対する消化器内視鏡の新しいガイドラインを発表した. この中で内視鏡治療時にワルファリンやダビガトランの単独投与例や2-3剤併用例でのヘパリン置換が推奨されている.
【目的】大腸EMRやESDにおけるヘパリン置換が後出血率に影響を与えるかどうか検討する.
【対象と方法】対象は平成21年1月から24年12月までにEMRを施行した2340例4975病変とESDを施行した115例117病変. 検討1)EMR施行例のうち, 抗血栓薬内服からヘパリン置換を行った71例208病変をA群, それ以外の2270例4767病変をB群とし, 臨床的特徴, 後出血率や医療費などについて検討した. 検討2)ESD施行例のうち, ヘパリン置換を行った9例10病変をC群, それ以外の106例107病変をD群とし, 1)と同様に検討を行った.
【結果】検討1)A群は, 平均年齢71.4歳, 平均腫瘍径7.8mmで, B群は男性1521例, 平均年齢66.3歳, 平均腫瘍径8.3mmで, A群で有意に高齢であった. EMR後出血はA群2例(2.8%), B群91例(4%)であり, 有意差は認めなかった. 検討2)C群は, 平均年齢74.7歳, 平均腫瘍径は44.5mmで, D群は平均年齢67.5歳, 平均腫瘍径33.4mmで, C群で有意に高齢であった. ESD後出血はC群0例(0%), D群3例(2.8%)であり, 有意差は認めなかった. A群, C群が治療前に内服していた抗血栓薬は, ワルファリンまたはダビガトラン単独55例, アスピリン単独6例, クロピトグレル単独2例, チクロジピン単独1例, 2剤併用17例で基礎疾患は心房細動55例, 心筋梗塞や狭心症15例, 脳梗塞7例, その他7例であった(重複含む). また, 入院日数と医療費の平均は, C群(12日, 551,144円)とD群(8日, 465,977円)で大きな違いを認めなかったのに対して, A群(11日, 397,862円)はB群(2日, 146,293円)と比して多い傾向を認めた.
【結語】大腸EMR/ESDではヘパリン置換を行っても後出血のリスクは増大せず, 血栓塞栓症のリスク軽減のために有効な方法であると考えられたが, 入院期間や医療費の増加を認めた.
索引用語 ヘパリン置換, 大腸EMR/ESD後出血