抄録 |
局所進行胃癌に対しては,広範な所属リンパ節郭清(D2郭清)を伴う胃切除術によって,治療成績が向上する事が知られており,今やD2郭清は欧米でも標準手術として認識されている.郭清範囲に関しては胃癌治療ガイドラインによって決定されているが,未だ議論のある点や,技術的に工夫を要する点がいくつか存在する.以下にそのポイントを列挙すると同時に実際のビデオにより手術手技を供覧する.1).胃上部癌に対する脾摘:脾摘の是非に関しては現在追跡中の臨床試験の結果が待たれるが,脾門部リンパ節の確実な郭清のために脾摘を行うのが望ましい.膵液漏を予防するため,膵尾部まで脾動静脈を温存し血流を維持する事が肝様である.2).網嚢切除:網嚢切除の意義に関しては現在臨床試験が進行中である.後壁の漿膜に露出する癌に対しては網嚢切除を行っている.網嚢切除は胃周囲の層構造の理解を深め,リンパ節郭清を確実に行うためにも習得しておくべき手技である.3).No.14vの郭清:胃下部に存在する進行胃癌に対してはNo.6リンパ節郭清を確実に実施するために,膵頭部から膵体部の被膜を剥離し,胃結腸静脈幹,前上膵十二指腸静脈,右胃大網静脈の根部を確認し,No.14vとこれに続くN0.6の郭清が必要と考える.4). No.12b, p, No.13の郭清:十二指腸に浸潤を認める胃癌ではNo.13の郭清効果が認められるとする報告もあり,No.13と肝十二指腸靱帯内のリンパ節郭清も必要と考える.5).食道浸潤胃癌:食道浸潤胃癌ではN0.110,No.111もD2郭清に含まれる.食道浸潤3cm未満の腫瘍に対しては経裂孔的な下縦隔郭清が推奨されている.食道胃接合部癌に対してはNo.16a2latの郭清効果も認められている.6).大動脈周囲リンパ節郭清:予防的郭清の意義は臨床試験で否定されたが,治療的郭清の意義については不明である.高度進行癌の術前化学療法後に行っている.実際の手術に際しては層の構造を含めた解剖学的な知識が重要である.腹腔鏡下手術や,ロボット支援手術によってもたらされる新知見もあり,柔軟で幅広い技術の習得が望まれる. |