セッション情報 シンポジウム18(消化器外科学会)

新時代の消化器癌標準手術 ≪ビデオ≫

タイトル 外S18-5:

当科での進行下部直腸癌に対する術前放射線治療併用腹腔鏡下直腸癌手術の実際

演者 的場 周一郎(虎の門病院・消化器外科)
共同演者 黒柳 洋弥(虎の門病院・消化器外科), 森山 仁(虎の門病院・消化器外科)
抄録 (はじめに)本邦でのT3以深の下部直腸癌に対する標準的治療は,側方郭清を伴った拡大手術であった.一方,欧米においては術前放射線治療(以後NART)に直腸間膜全切除(以下TME)となっており,近年後者の局所再発率が本邦での拡大手術と同等以上の報告が行われ,さらにNagawaらの報告により,NARTが予防的側方郭清にとって代われる可能性が示された.当科でも,2010年4月にNARTを導入し,術前診断においてT3以深またはN1以上の下部進行直腸癌に対してはNARTを行った後,腹腔鏡下TMEを施行するようになった.今回我々は当科で行ったNART症例に関しての成績にかんして報告する.(対象)2010年4月から2013年2月までに当科でNARTを行った75例を対象とした.(適応及び方法)下部直腸癌の内,術前診断にてT3以深またはN1以上をNARTの適応とした.CTおよびMRI検査にて長径7mm以上のリンパ節が存在する場合,転移陽性とした.NARTとして,45Gyを25回に分割するlong courseと25Gyを5回に分割すshort courseを症例により選択し,long courseにはUFT+PSKを付加した.手術は全例腹腔鏡下に行った.予防的側方郭清術は行わず,術前診断にて転移を疑ったものに対してのみ,腹腔鏡下に側方郭清を行うようにした.NART後にリンパ節が縮小した場合でも側方郭清は省略せず行った.手術方法は,5ポート,10mm flexibleのハイビジョンカメラを使用した.(結果)開腹移行は1例もなく,全例腹腔鏡下手術が行えた.肛門温存術は57例であった.全例に予防的人工肛門を造設したが,2例3.5%に縫合不全を認めた.側方郭清は27例に行い,10例37%が転移陽性であった.術後の病理検査では,pCR2例,ypStage1 19例,Stage2 30例,Stage3a 9例 Stage3b 9例 Stage4 6例であり,根治度A症例においての再発は,肝転移4例,肺転移1例,216リンパ節1例であり,局所再発は現在のところ認めていない.(まとめ)観察期間は観察期間はまだ短く,不十分ではあるが,局所再発は認めず有用と思われる.
索引用語 直腸癌, 腹腔鏡