抄録 |
術後補助化学療法の効果に関する新しい知見が得られた現在では,腫瘍切除と郭清のみで膵臓癌を根治せしめようとするのではなく必要十分な郭清に加えて適切な補助化学療法を行うことが治療成績の向上につながるという考え方が重要である.(PDの手順)#16への転移が切除の適応にかかわる場合は十二指腸授動から#16のen block samplingを行い切除適応を決定するが,PLsmaからSMAへの癌進展が切除適応に関わる場合はSMAとSMVを小腸間膜側から確保し,切除性についての評価を行う.門脈系への癌浸潤は非切除としない.腫瘍が膵頭上部にあり肝動脈周囲郭清が重要である場合は,肝十二指腸間膜操作から開始するのが合理的である.通常はTreitz靭帯を開放し結腸間膜下方からSMA-SMVを確保し,十二指腸授動,肝十二指腸間膜,十二指腸切離(胃切離),膵切離と,時計回りに行うと決めておけば迷いがない.(脾静脈切離)膵頭部癌がPV-SMVに浸潤している場合は躊躇なく門脈合併切除を行う.そのように決めて臨んだほうが手術操作は単純化される.SMA周囲の展開が困難になる場合は,脾静脈を切離すればSMA周囲を直視下で展開でき,郭清操作が容易になる.(膵切離)主膵管壁に熱損傷が加わらないように,主膵管の切離はメスで鋭的に行う.正常膵は電気メスだと切離面が不整になるのでメスで鋭的に切離する.膵実質の機械的損傷を避けるために鉗子類で膵をクランプしない.(膵腸吻合)膵管空腸吻合を行う.ステントは必須ではないが,ステントを置くことで運針の位置決めが容易になる.(十二指腸空腸吻合)胃と十二指腸空腸吻合部の配置(straight method)と,空腸側の吻合線に角度をつけるtwisted anastomosisがDGEの防止に有利である[Surg Today 42: 441, 2012].(DPの手順)膵切離を先行して,体部から尾側に向かって順に剥離を進める.これによりSMA周囲,腹腔動脈から後腹膜にかけてen blockに郭清可能であり腫瘍に触れる必要がない.(DPの膵断端)自動縫合器を使用しない場合は非吸収糸の結節縫合で閉鎖する.単純縫合のほうが断端閉鎖は確実である. |