セッション情報 シンポジウム18(消化器外科学会)

新時代の消化器癌標準手術 ≪ビデオ≫

タイトル 外S18-8:

巨大肝癌に対する安全な肝切除の確立

演者 木戸 正浩(神戸大・肝胆膵外科)
共同演者 福本 巧(神戸大・肝胆膵外科), 具 英成(神戸大・肝胆膵外科)
抄録 【はじめに】巨大肝癌に対する手術はHanging maneuverによる前方切除法の手技的・腫瘍学的な有用性が,肝切除術において報告されてきた.しかし実際には腫瘍による肝門部やIVCへの浸潤・圧排が強く,IVC前面に盲目的に鉗子を通すことは大出血のリスクを高める.当施設の巨大肝癌に対する肝切除術の要点を述べるとともにビデオを供覧し,その成績を報告する.【対象】2004.1-2012.12に当院で施行されたHCCに対する肝切除402例中,径10cmを超える巨大肝癌に対し右肝切除を施行した43例 (減量切除17例含む)【手術手技】原則開胸操作は行わず,肝門部での動・門脈を個別に処理した後,腫瘍流入血の低下を計り,脱転を先行させる. IVCまで右葉完全脱転後,直視下でHanging tapeを通し,脱転した右葉背側にミクリッツガーゼを留置.これにより深部肝切離面の展開を容易にするとともに,静脈圧を低下させることにより出血軽減につながる.実質切離にはCUSAを使用し,腫瘍により高度圧排された中肝静脈周囲を丁寧に処理する.【成績】肝右葉の脱転およびHanging tapeの使用は全例で可能であった.手術時間は615分(286-1088分),出血量は2045ml(405-6650ml).2例(4.7%)で開胸操作を必要とした.横隔膜浸潤を3例(7.0%)に認めた.Vp3/4の門脈腫瘍栓を18例(41.9%)に認めたが,すべて摘出可能であった.IVCの圧排は40例(93.0%),Vv3のIVC腫瘍栓を3例(7.0%)に認めたがこれも摘出可能であった.下大静脈壁への直接浸潤は1例(2.3%)で認めた.術関連死亡例はなく,合併症として難治性胆汁漏3例(7.0%),難治性腹水を2例(4.6%),創感染3例(7.0%)を認めた. R0手術を行った29例中,14例(48.2%)で肝内再発をきたした.肺単独再発を2例(4.7%)に認めたが,ともにIVC腫瘍栓合併症例であった.【結語】IVCの高度圧排を伴う巨大肝癌においても肝脱転は可能である.また予後規定因子は肝内再発の制御であるため,前方切除法にこだわらず安全な手技の選択が必要とされる.
索引用語 肝細胞癌, 切除