セッション情報 シンポジウム18(消化器外科学会)

新時代の消化器癌標準手術 ≪ビデオ≫

タイトル 外S18-9指:

肝門部胆管癌に対する肝左三区域切除術の標準手技

演者 伊神 剛(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
共同演者 江畑 智希(名古屋大大学院・腫瘍外科学), 梛野 正人(名古屋大大学院・腫瘍外科学)
抄録 【目的】我々は以前,左優位の肝門部胆管癌に対する肝左三区域切除術は,肝左葉切除術と比較し,根治切除率が高く,進行癌症例が多いにも関わらず同等の予後を有することを報告した(Ann Surg 2012).肝門部胆管癌の治療には,肝左三区域切除術を安全に施行することが重要である.今回の報告では,肝門部胆管癌に対する肝左三区域切除術の標準的な手術をビデオで供覧する.【術式の要点】1.術前に門脈の左枝と前区域枝に対してipsilateral法で門脈枝塞栓術を施行しておく.2. 肝十二指腸間膜の郭清を開始するが,固有肝動脈や門脈本幹が同定できたら総胆管を切離する.3.胆嚢摘出術の先行により,左肝動脈,門脈左枝,右肝動脈前区域枝の同定・切離が良好な視野の下に可能である.4.門脈右前区域枝を同定・切離する場合には,後区域の肝動脈や門脈の損傷に十分注意を払う.5.肝表面にdemarcation lineが出現することを確認する.6.左側から尾状葉を授動するが,その範囲は下大静脈の右壁までとし,授動しすぎないように注意する.7.左肝静脈と中肝静脈を切離する.8.demarcation lineに沿って肝離断を開始し,右肝静脈が切離面に露出したら,これに沿って肝離断を進める.9.肝離断を終了した後に,後区域胆管枝を切離するが,肝動脈,門脈の損傷に十分注意を払う.10.胆道再建を施行し手術を終了する.【成績】2012年12月までに切除した肝門部胆管癌671例のうち本術式を145例に施行した.門脈合併切除を66例,動脈合併切除を62例に施行した.特に動脈門脈同時切除再建を46例に施行した.平均手術時間673分,平均出血量2409mlで,在院死亡は5例(3%)であった.上記手技が安定した2007年以降の89例では,平均手術時間620分,平均出血量1703mlで,在院死亡は1例(1%)であった.【結語】肝門部胆管癌に対する肝左三区域切除術は,難易度の高い術式であるが,標準化により安全性を高めることが可能であった.
索引用語 肝門部胆管癌, 肝左三区域切除術